タスマニアデビルはオーストラリアのタスマニア島にのみ生息している固有種です。
フクログマ、フクロアナグマなどの別名がありますが、英名のタスマニアデビルが世界的にも一般的ですね。
名前の由来はその凶暴な性格と不気味な鳴き声です。
また、死肉をあさるところも、デビル(悪魔)の由来です。
そんなタスマニアデビルは現在、腫瘍(ガン)が原因で絶滅の危険性があります。
見た目はとってもかわいいタスマニアデビルとはどんな動物なのでしょうか?
日本で見ることはできるのでしょうか?
タスマニアの悪魔、タスマニアデビルに迫ってみましょう。
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タスマニアデビルってどんな動物
タスマニアデビル | |
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学名 | Sarcophilus harrisii |
英名 | Tasmanian devil |
生息地 | タスマニア島 |
体長 | 50~60㎝ |
体重 | 10~12kg |
タスマニアデビルはフクロネコ目・フクロネコ科・タスマニアデビル属の哺乳類です。
カンガルーやコアラと同じ有袋類の仲間ですが、肉食性のタスマニアデビルはフクロネコ目です。
ちなみに草食性のカンガルーやコアラ、雑食性のフクロギツネなどは「双前歯目(そうしぜんもく)」に分類されます。
タスマニアデビルの生息地
タスマニアデビルはその名の通り、オーストラリアのタスマニア島にのみ生息しています。
タスマニア島はオーストラリア大陸の南に位置している離島です。
夜行性なため、昼間はやぶや穴の中で休んでいます。
オーストラリアでもタスマニアデビルの化石が見つかっているため、かつては生息していたと考えられています。
人間が持ち込んだ犬「ディンゴ」との生存競争に負けて絶滅してしまいました。(タスマニア島にはディンゴがいなかった)
タスマニアデビルの特徴
体長50~60㎝、体重は10~12㎏ほどです。メスの方が少し小さく、体重は8㎏ほどです。
現在地球上に存在している、肉食性の有袋類の中では最大の種類です。
体高は30㎝で前足の方が後ろ足よりも少しだけ長いため、ひょこひょこと特徴的な走り方をします。
結構かわいいです。
体の色は黒で、胸と腰の辺りに白いラインが入ります。
全体的に荒い毛が生えるのですが、耳の毛が比較的薄いため、興奮すると血管が透けて耳がピンク色に見えます。
口の中には鋭い牙が生えそろっていて、特に上アゴの犬歯が長いです。
この上アゴの犬歯は生涯伸び続けるそうです。
四肢には鋭い爪も持っていますが、これは攻撃用に発達したのではなく穴掘り用です。
タスマニアデビルの名前の由来
タスマニアデビルはフクログマやフクロアナグマ、フクロクズリなどと呼ばれますが、どれも見た目や性質がそれぞれの動物に似ているからで、遺伝的なつながりはありません。
基本的には英名の「Tasmanian devil(タスマニアデビル)」が一般的ですね。
これは鳴き声や歯肉をあさること、凶暴な性格などが由来とされています。
現在は歯肉をあさることで伝染病の流行を防いでいたり、野生化したネコの増加を防いでいたりと、「神」とされるほど大切にされています。
タスマニアデビルの鳴き声
デビルの由来にもなったタスマニアデビルの鳴き声は、夜に聞いてしまうと本当に悪魔のように独特です。
「背筋が凍るような鳴き声」とも言われています。
ケンカの時や興奮しているときに大きな鳴き声を上げるようです。
まさにデビルの名にふさわしい、おどろおどろしい鳴き声ですね。
この声を初めて聴いた夜は眠れないでしょう!
タスマニアデビルの食べ物
タスマニアデビルは肉食性です。
基本的には死骸を食べることが多いようです。
視覚は弱いですが、優れた嗅覚を持っているため、臭いをたどって動物の死体を見つけます。
1日に16㎞もの距離を、獲物を探して歩き回ります。
ただ、死体だけを食べるわけではなく、フクロギツネ、ワラビー、ウォンバットなどの小型哺乳類や鳥類、昆虫なども襲って食べます。
体の大きさの割にはアゴの力が強く、骨までバリバリ噛み砕いて食べます。
かなりの大食漢で、体重の15%もの肉を1日で食べてしまいます。体重の40%の肉を30分で平らげてしまったという記録もあります。
タスマニアデビルが生き物の死体を食べることで、伝染病の蔓延を防いでくれているとも言われています。
ちなみにタスマニアデビルのしっぽには栄養を蓄えることができるため、食料不足の際に重宝しています。
しっぽが痩せてしまっている個体は栄養不足です。
タスマニアデビルの性格
タスマニアデビルは名前の通り悪魔のように凶暴な性格をしています。
特にオス同士の争いは激しく、メスをめぐってお互いがケガをするまで戦います。
食事中も争いが絶えないのですが、相手を追い払うことはそこまでせず、食べることを中心に考えてしまうようです。
実際に複数のタスマニアデビルが1つの獲物をつついているシーンも結構あります。
自分より大きな生き物に対しては臆病な一面を見せます。
人間に対しても牙をむき出しにはしますが威嚇程度で、何もしなければ攻撃を仕掛けてくることはありません。
タスマニアデビルの繁殖
タスマニアデビルはオーストラリアの初秋である、3月ごろに発情期を迎えます。
繁殖期を迎えたメスは首周りの脂肪が増えることが特徴です。
メスは巣穴を掘って出産の準備を始めます。
オスはメスをめぐって激しいバトルを展開します。
勝者はメスとの交尾が許されますが、メスは他のオスとも交尾をしようとするそうです。
そのため、オスはメスを獲得すると、メスの巣の中に監禁してしまいます。
誰にも渡さないためですね。したたかです!
メスが出ようとすると攻撃して連れ戻すほどの徹底ぶりです。
交尾の際はオスの爪がメスの背中や腰を傷つけるため、オスとメスの見分け方にもなっています。
タスマニアデビルは有袋類ですがカンガルーのように前方に向いた袋(育児嚢)ではなく、おしり方向に開いた育児嚢を持っています。
穴を掘るため、土が入らないようになっているんですね。
妊娠期間は3週間ほどで、未熟な赤ちゃんを30~40匹産みます。
ただし、育児嚢の中に乳首は4つしかなく、たどり着けた4匹のみが生き残れます。通常は2~3匹の子どもを育てます。
この時からすでにしたたかな生活が始まっているんですね。
赤ちゃんは4ヶ月ほどで袋から出てきます。カンガルーのように再び袋に入ることはありません。
顔を突っ込んでお乳を飲みます。
このころ、母親の背中に乗っている姿を見かけることがあるようです。
10~12月には巣の外に出てきて、1月に独り立ちします。
生後2年で性成熟します。
タスマニアデビルの寿命
タスマニアデビルは野生下では5~6年生きると言われています。飼育下では6~7年です。
ただ、生後1年以上生きることができる個体は半数ほどだと言われています。
さらに伝染病(DFTD)の流行で個体数は激減しています。
タスマニアデビルと人間の関係
タスマニアデビルとディンゴ
タスマニアデビルはもともとオーストラリア大陸にも生息していました。
これは化石からも分かっています。
しかし、数万年前にやってきた人間が犬を連れてきてしまいました。
この飼い犬が野生化したのが「ディンゴ」です。
ディンゴはオオカミの習性を持っていたため、群れで行動します。
狩りも大勢で行うんです。
単独行動のタスマニアデビルには勝ち目がありませんでした。
その結果、ディンゴとの生存競争に敗れ、タスマニアデビルはオーストラリア大陸から姿を消します。
タスマニアデビルの駆除
タスマニア島にはディンゴがいなかったため、タスマニアデビルは滅びずに済みました。
ただ、タスマニア島にも人間が入ってきてしまい、家畜などを飼い始めました。
家畜を襲うタスマニアデビルは嫌われ、懸賞金がかけられるほどに駆除されてしまいます。
その結果、同じ地域で同じように生き残っていたフクロオオカミが先に絶滅してしまいます。
このことに問題を感じた人間側はタスマニアデビルの駆除をやめ、逆に保護に動き出します。
フクロオオカミという犠牲を出すことで、タスマニアデビルは生き残ることができたんです。
タスマニアデビルの腫瘍(癌)
現在タスマニアデビルは伝染性の腫瘍(癌)により、危機的な状況にあります。
1996年の発生から2009年までに70%もの数のタスマニアデビルが死んでしまったんです。
数にすると14万匹から2万匹にまで減っています。
この腫瘍は「デビル顔面腫瘍性疾患(DFTD)」(Devil Facial Tumour Disease)と呼ばれる悪性の癌です。
顔にできた大きな腫瘍が目や口を潰していき、最終的には何も食べられなくなり、餓死してしまいます。
早ければ感染から半年で死んでしまいます。
現在、DFTDのせいでタスマニアデビルの寿命は3年にも満たないと言われています。
大食漢のタスマニアデビルです。
食べられなくなるとあっという間に死んでしまうんですね。
さらに、DFTDは癌なのに他の個体にも伝染します。
タスマニアデビルがケンカや交尾で相手を傷つけることで、癌細胞が相手に伝染してしまうんです。
タスマニアデビルの性質上、相手を傷つけるのを止めることはできません。
傷口からどんどん感染が広まっているんです。
DFTD克服の兆し
2009年までDFTDの治療方法や対策はありませんでした。
ただただタスマニアデビルの数だけが減っていったんです。
しかし研究者はあきらめませんでした。
タスマニアデビルが滅んでしまったら、タスマニア島の生態系が崩れてしまいます。
死肉の掃除屋がいなくなり、いろんな伝染病が広まるかもしれません。
他の草食動物が増えすぎて、植物に影響が出てしまうかもしれません。
タスマニアデビルを救うために様々な対策が行われました。
感染していない個体のみを別の島へ一時的に保護したんです。
また、研究を重ねた結果、ワクチンも開発されました。
しかし、ワクチンは一時的なものであり、全てのタスマニアデビルに決められた回数のワクチンを注射するのは不可能に近いです。
タスマニアデビルの進化
このように自然的に発生した病気で、生き物が絶滅まで追い込まれることは意外と少ないんです。
過去に絶滅した生き物の大半は人間の手によるものです。
今回のDFTDもタスマニアデビル自身の力で克服され始めています。
癌から回復したであろう個体が見つかっているんです。
癌が弱まっている可能性もありますが、DFTDを乗り越える兆しになっているのは確かですね。
研究者たちはどのような経緯で、DFTDを克服したのかを調べていくようです。
また、攻撃性の低いタスマニアデビルも現れているようです。
攻撃性が低ければ、他のタスマニアデビルから危害を加えられることが少なくなります。
そうなればDFTDが感染するリスクも減ります。
一時は絶滅の危機さえあったDFTDですが、なんとかタスマニアデビルの減少は食い止められているようです。
希望が持てますね。
タスマニアデビルはペットにできる?
タスマニアデビルを個人的に飼育することはできません。
絶滅危惧種に指定されているため、取引には国際的な許可が必要になってくるんです。
駆除やDFTDの伝染で数が減っているんです。
かわいいとはいえ違法に取引してしまうと厳罰がくだされることもあります。
タスマニアデビルを飼育している動物園
現在日本でタスマニアデビルを飼育している動物園は東京都の多摩動物公園のみです。
多摩動物公園のタスマニアデビル
東京都日野市の多摩動物公園には現在3頭のタスマニアデビルが飼育されています。
2016年にやってきたメスのメイディーナと2017年にやってきたオスのテイマーとダーウェントです。
3頭で仲良くエサを食べることもあるため、今後繁殖するかもしれません。
日本の他の動物園でもタスマニアデビルを見られる日が来るかもしれませんね。
まとめ
タスマニアデビルはタスマニア島にのみ生息している固有種です。
不気味な鳴き声や死肉をあさることから「デビル」と呼ばれるようになりました。
凶暴な性格で傷つけあうこともしばしばですが、顔だけ見れば本当にかわいいですね。
DFTDという伝染性の癌がはやっているのが気になりますが、進化により乗り切れそうですね。
日本でも飼育している動物園があるため、気になる方は見に行ってみましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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