コアラと言えば、木の上でのんびり暮らしているのがとても人気ですよね。
いつもムシャムシャと葉っぱを食べているイメージです。
実はコアラが食べているのは「ユーカリ」という木の葉っぱで、毒がある植物なんです。
しかも不味く、消化にも悪いんだとか、、、
そんな植物を食べる動物なんて普通はいませんよね。
実際にユーカリを食べる動物はコアラだけです。
コアラはなぜ、こんな有毒植物を食べるのでしょうか?
そもそも食べても平気なんでしょうか?
コアラの生態も説明しながらこの謎に迫ってみたいと思います。
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コアラってどんな動物?
コアラ | |
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学名 | Phascolarctos cinereus |
英名 | Koala |
生息地 | オーストラリア東南部 |
体長 | 60~80㎝ |
体重 | 4~14kg |
コアラは双前歯目・コアラ科・コアラ属の哺乳類です。
カンガルーなどと同じ有袋類ですね。
ちなみに現在、有袋類の分類はコアラやカンガルーなど、草食性や雑食性のグループを「双前歯目」に、タスマニアデビルなどの肉食性のグループを「フクロネコ目」とされています。
コアラと最も近い遺伝子を持っている有袋類は「ウォンバット」です。
顔も似ていますよね。
大昔にコアラとウォンバットの共通の祖先が、地上と樹上に生活の拠点を分けたのが始まりです。
コアラの生息地
コアラはオーストラリア東部の熱帯や温帯のユーカリ林に生息しています。
オーストラリア西部やタスマニア島には分布していません。
ヨーロッパ人が入ってきたことで、生息地は大幅に減少したと言われています。
コアラの生態
コアラは基本的に単独で行動します。
繁殖期にはペアや親子で行動することもあるようです。
基本的には樹上で生活しています。
特定の巣は持たず、日光を遮るように葉っぱが生い茂った枝の上で休みます。
ただ、木を移動する時は地上に降りてきます。短い距離であれば、飛び移ることもできるみたいです。
1日に18~20時間も睡眠に費やします。
活動が活発になるのは明け方や夕方で「薄明薄暮性」と言われる行動スタイルです。
コアラの食べ物
コアラがこれほどまでに睡眠に時間を費やすのは、食べているエサに原因があります。
コアラがユーカリの葉っぱをエサとしているのは有名な話ですよね。
実はユーカリの葉っぱにはタンニンや油分が多く含まれていて、消化によくないんです。
そのため、活動のエネルギーを最低限に抑えるため、ほとんど動かずに寝て過ごすんです。
また、コアラはユーカリの新芽のみを食べます。
できるだけ栄養価の高い葉っぱを選んでいるんですね。
同じように葉っぱを食べ物としていて動きが遅いところもそっくりなのが「ナマケモノ」ですね。
ナマケモノが1日に食べる食事の量はなんと8g!
エネルギーがほとんどないため、ナマケモノは素早く動きたくても動けないんですね。
ちなみにユーカリの種類は全部で700種類以上ありますが、コアラが食べるのは数種類だけです。
しかも好みがはっきりしていて、個体によって食べるもの食べないものがあります。
これは生まれたときに母親が食べていたユーカリの匂いを覚えているからだそうで、地域によって好みが決定するみたいです。
動物園で飼育されているコアラも好き嫌いや気分があり、何種類も用意したユーカリの葉っぱから、その日食べるものを選ぶそうです。
食にうるさいんですね。意外にもグルメです。
コアラとユーカリの毒素
ユーカリの葉っぱは消化に悪いだけでなく、青酸という毒素も含んでいます。
この毒素はユーカリが防衛手段として身につけたもので、昆虫などの動物に食べられないためのものです。
コアラはそんなユーカリの防御を無視して葉っぱを食べることができるんです。
これにはコアラの盲腸が関係しています。
2mにもなる長い盲腸の中に、大量の微生物を保有していて、ユーカリの毒素を発酵により分解することができるんです。
この微生物は母親から子どもに受け継がれます。
母親は子育ての最中、食べたものを完全には消化せず「パップ」という半消化状態にして子どもに食べさせます。
このパップを食べることで、子どもに母親の微生物が分けられます。
母から子に代々受け継がれていくんです。
コアラがユーカリを食べるわけ
コアラがユーカリを食べられる理由は分かりました。
ではどうして、わざわざ毒のあるユーカリを主食とするようになったのでしょうか?
それは、ユーカリを食べる動物が他にいないからです。
生存競争をしなくて済むんですね。
同じ食べ物を食べている動物は、争い合うのが普通です。
そのせいで絶滅してしまうこともあるんです。
実際にフクロオオカミはディンゴとの生存競争に破れて絶滅してしまいました。
とは言え、毒のあるユーカリを食事に選んだのは、相当追い込まれていたからでしょうか?
もしかしたら最初に食べたコアラの中には、毒のせいで死んでしまったものもいたかもしれません。
コアラの赤ちゃん
コアラはオーストラリアでは春の9月~夏の2月に繁殖期を迎えます。
このときばかりはおとなしいコアラのオスも、鳴くことで縄張りをアピールするみたいです。
メスは3~4歳から毎年1頭の赤ちゃんを産みます。
メスの妊娠期間は35日ほど、約1ヶ月ですね。
まれに双子が産まれるみたいです。
有袋類のコアラには袋「育児嚢(いくじのう)」があります。
赤ちゃんはこの中で6~7ヶ月間育てられます。
育児嚢の入り口はおしり向きに開いています。
母親は入り口の筋肉を閉めることで、子どもが穴から転げ落ちないようにできます。
育児嚢の中で母乳を飲んで育っていた赤ちゃんは、生後22週辺りから顔を出し始めます。
そして、おしり向きの入り口からパップを食べるんです。
生後26~27週目からは育児嚢から出始め、母親に抱かれながら過ごします。
生後30週目ほどまでパップを食べ、その後は母親と同じユーカリの葉を食べ始めます。
生後36週目には体重が1kgに達し、育児嚢には戻りません。
体重が2kgになるまで母親におんぶされて過ごし、生後12ヶ月で巣立ちます。
コアラの寿命
コアラの平均寿命は10年ほどです。
一般的にオスよりもメスの方が長生きだと言われています。
それは、オスのコアラが他のオスとの争いでケガをしたり、メスを求めて移動して食べられたりと、寿命を全うせずに死んでしまうことが多いからです。
また、高速道路近くで暮らしているコアラも短命です。交通事故が多発しているんです。
人間のテリトリー近くのグループは短命になってしまいます。
そのため、飼育下のコアラは比較的長生きです。
コアラの天敵
生存競争を避けたコアラですが、さらに天敵から身を守るために樹上で生活しています。
ここまで来るとコアラは本当に争い事が嫌いなんですね。
しかし、コアラが木から木に移動するとき、地面に降りた際に襲われることがあります。
飼い犬が野生化したディンゴや人間が狩りを楽しむために持ち込んだキツネが、コアラを食べるんです。
ユーカリを食べるコアラですが、ユーカリの毒までは身に付けることができなかったようですね。
また、人間が連れてきたキツネが野生化し、コアラを狙って木に登っていることが目撃されています。
そこまで高いところまでは登れていなかったようですし、樹上のコアラが襲われているところも目撃されていません。
おそらくコアラの匂いを辿って、木の上に狙いを定めたのでしょう。
ユーカリの木にでこぼこが多いのも、キツネを登りやすくしているようです。
ディンゴも元々は人間が持ち込んだ飼い犬ですが、キツネはそれよりもさらに後に持ち込まれた完全なる外来種です。
コアラが樹上で襲われるようなことがあれば絶滅の危険もあります。キツネによりコアラが絶滅してしまえばそれは完全に人間のせいです。
キツネがこれ以上、木に登らないことを祈ってしまいますね。
コアラと人間の関係
人間の生息地が広がるごとに、コアラは数を減らしていると言われています。
また、過去には毛皮目的の乱獲も行われています。
絶滅危惧種にも指定され、国際的に保護の対象とされています。
コアラのクラミジア
近年、クラミジアに感染しているコアラが急増しています。
クラミジアは失明や不妊の原因になるため、コアラの数を減らしてしまう重大な問題です。
クラミジア感染個体の妊娠確率は10~15%まで低下してしまいます。
生息地破壊によるストレスがクラミジア発症を加速させているようで、ここにもやはり人間が関係しているようです。
ワクチンの接種など、保護活動が進められています。
まとめ
コアラは本当にかわいいですよね。
毒のあるユーカリを食べるのは、争い事が嫌いなコアラらしい理由だったんです。
子どもにもユーカリ消化のための微生物を分け与えるのは、母性本能が高いコアラ特有の習性ですね。
病気による絶滅も心配されています。
なんとかこのかわいい動物を守っていきたいですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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