ツキノワグマは日本にも生息しているクマとして有名ですよね。
ただ、臆病な性質を持っているツキノワグマは、基本的には山奥から出てこず、人前にも姿を現さないと言われています。
彼らがどれくらいの大きさで、どんな暮らしをおくっているのか、知らない人も多いのではないでしょうか。
危険生物としても注意が必要なツキノワグマです。
その生態を知っておくことは、身を守るためにも大切ですよね。
本州最大の大型哺乳類「ツキノワグマ」に迫ってみましょう。
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ツキノワグマはどんなクマ?
ツキノワグマは食肉目・クマ科・クマ属の哺乳類です。
食肉目とは、その名の通り肉を主食とする体の特徴を持ったグループで、イヌ科やネコ科、イタチ科などを含みます。
現在地球上に存在しているクマ科の動物は、全部で5属8種です。
クマ属にはツキノワグマ以外にもホッキョクグマ、ヒグマ、アメリカグマが属しています。
クマ科の中では最も種類が多い属ということになります。
クマの仲間は意外にも8種類しか存在しないんです。
それでも比較的広い範囲に分布しているので、クマ科は成功しているグループと言えますね。
世界での、ツキノワグマの分布
日本に生息しているとして有名なツキノワグマですが、実は日本以外にも分布しているんです。
日本のツキノワグマは「ニホンツキノワグマ」という、ツキノワグマの亜種です。
つまり、日本という島国で、独自の生態を持ったツキノワグマということなんです。
日本以外では中国、台湾、韓国、北朝鮮、ロシア東部、インド、イラン、パキスタン、アフガニスタン、バングラデシュ、ミャンマー、ネパール、ブータン、ラオスなどに幅広く分布しています。
ユーラシア大陸の南部、アジア地区を生息地としているんです。
それぞれの地域で計7種の亜種が存在しています。
・ニホンツキノワグマ(日本)
・チベットツキノワグマ(中国のチベット地方)
・シセンツキノワグマ(中国四川省周辺)
・ウスリーツキノワグマ(韓国、北朝鮮、ロシア地方)
・パロチスタンツキノワグマ(イラン、パキスタン)
・ヒマラヤツキノワグマ(パキスタン、ヒマラヤ山脈周辺)
・タイワンツキノワグマ(台湾)
ニホンツキノワグマの分布
日本に生息しているニホンツキノワグマですが、現在は本州と四国の一部にのみ生息しています。
33都道府県に生息していることが確認されています。
ちなみに東京でも、都心から離れた奥多摩地方にはツキノワグマが生息しています。
過去には本州、四国、九州の広い範囲に生息していましたが、道路工事やスキー場の建設、植林地域の増加、さらにはシカやイノシシ用の罠に引っかかってしまうなどして生息数が激減しました。
九州のニホンツキノワグマは絶滅、四国でも愛媛県と香川県の個体は絶滅しています。
ツキノワグマはブナやナラといった広葉樹林を好んで住処とします。
そのため、日本での分布も、広葉樹林に限られているんです。
しかし、スギやヒノキなどの針葉樹が人工的に植林されてしまうと、ツキノワグマは生息地が分断されてしまいます。
その結果、繁殖ができなかったり、できたとしても血縁関係にある者同士だったりするわけです。
遺伝子的にも弱い子どもばかりが産まれてしまい、長生きできなくなってしまいます。
最終的には地域絶滅が発生してしまうんです。
これが日本中で起こってしまったらどうなるかは分かりますよね。
ニホンツキノワグマは日本からいなくなってしまいます。
ちなみに日本にはもう一種類、ヒグマが存在します。
こちらは北海道のみに分布しているため、ツキノワグマと出会うことはありません。
ツキノワグマは最大でどれくらいの大きさになるの?
ニホンツキノワグマは、他のアジア大陸のツキノワグマに比べて小柄です。
平均的なオスの体重は60㎏ほど、メスは36㎏ほどです。
体長は最大でも150㎝前後です。
一般的に、メスよりもオスの方が体が大きくなります。
世界には大型になるツキノワグマが存在します。
ロシアなどの寒い地域では最大で体長180㎝、体重250㎏の個体が確認されています。
冬眠するための準備期間である秋には、脂肪を蓄えるため大型になるようです。
ヒグマ並みの大きさです。
ツキノワグマの特徴
ツキノワグマの体毛は全体的に黒っぽい色をしています。
特徴的なのが胸に入った白い「V字」模様です。
この模様が三日月のように見えることから「月の輪熊」と名付けられました。
耳は丸みを持っていて、他のクマに比べると比較的大きいです。
前足が後ろ足よりも長く、木登りが得意です。
ヒグマなどと比べると、肩の筋肉が盛り上がっていませんが、それでも力強い前足を持っています。
見た目的にはアメリカクロクマと似ています。
こちらには月の輪はありませんが。
ツキノワグマの食べ物は何?
ツキノワグマは雑食性ですが、肉類よりもフルーツなどの植物をメインとして食べています。
四季がはっきりしている地域では、春には新芽や草などを食べ、夏には野イチゴ、秋にはブナやナラの木の果実を食べます。
特に果実はツキノワグマの大好物で、糞の成分を分析すると、90種類以上の果実を食べていることが分かっています。
得意な木登りで樹上の果実を食べることはもちろん、サルが落とした柿などのおこぼれを食べることもあります。
こうした果実をツキノワグマが食べることで、種子が糞となって森中に運ばれます。
種子はツキノワグマの体内で消化されません。
ツキノワグマが森を豊かにする役割を果たしているんですね。
ハチなどの昆虫が花の受粉の役割を持っていることや、鳥やクマが植物の種子を遠くへ運ぶ役割を持っていることなど、植物と動物は共存関係にあるんですね。
どちらが欠けても生態系が崩れてしまいます。
食肉目のツキノワグマは、動物を獲物とすることもあります。
アリやハチ、ハチの幼虫などを食べることが多いのですが、春先にはシカの子どもを襲うことも!
過去には共食いらしきことも観察されていますが、他のオスの子どもを殺してしまっただけという考えもあるようです。
ライオンと同じで、ツキノワグマも自分の強い遺伝子だけを残したいという習性を持っています。
また、ツキノワグマは日本の固有種「ニホンカモシカ」を唯一捕食できる動物です。
ニホンカモシカにとっては天敵と言える存在ですね。
ツキノワグマが人間を襲う理由!
2016年に衝撃的なニュースが飛び交いました。
秋田県でツキノワグマが人間を襲い、1ヶ月の間に4人の方が犠牲になってしまったんです。
これは、日本史上3番目に深刻な被害を出したクマによる襲撃事故です。ツキノワグマが人を襲った事例としては最悪とも言われています。
亡くなってしまったのは、いずれも山菜やタケノコを採りに行っていた方たちです。
他にも襲撃を受けて生き残った方がおり、複数のツキノワグマが人を襲っていたとされています。
本来は臆病で、人前には姿を現さないツキノワグマが、どうして人を襲ってしまったのでしょうか?
考えられる理由としては、ツキノワグマが自分の食べ物を守るために人を襲ったということです。
タケノコや山菜などはツキノワグマも好物としている食べ物です。
それを採っていたいた人を突発的に襲ってしまったのでしょう。
結果、目の前で倒れている人間はシカやイノシシの死骸と同じようなもの、、、
ツキノワグマがそれを食べない理由はないですよね。
おそらくこれが最初のきっかけです。
ツキノワグマをはじめとするクマの仲間は意外と賢く
「人間は簡単に倒せるんだ!そしておいしいんだ!」と思い、続けて襲うようになってしまいました。
これまで恐れていた人間が、大したことないと学習してしまったんですね。
ツキノワグマが、人間が山菜を採るほどの人里近くに現れるようになったのは、これまでは畑や杉林だったところが、ツキノワグマが住みやすい広葉樹の森林に変わってきていることが原因なようです。
地方の高齢化が進むと手入れが届かなくなり、畑は森林に変わります。そして、針葉樹林を広葉樹林に戻す活動も進められています。
そうなるとツキノワグマなどの動物も進出しやすくなり、人里近くにも現れてしまうんです。
過疎化や高齢化は、ツキノワグマが人と接っしてしまう機会を増やしてしまいます。
ツキノワグマに襲われないためには?
ツキノワグマが人間を襲ってしまうと、その個体は射殺されてしまいます。
今後も人を襲う可能性があるからです。
襲われてしまった人間も傷つき、そしてツキノワグマも殺されてしまう、、、
悪いことだらけですね。
ではツキノワグマに襲われないためにはどうすれば良いのでしょうか?
まず第一に、ツキノワグマがいそうな所へは行かないことが重要です。
山菜やタケノコを採りに行って襲われるケースが多いです。
ツキノワグマが人里に近付いていることを考えると、そういったところへ行くのはリスクが高すぎますよね。
できれば行かない方が身のためです。
どうしても山へ行く必要がある場合は、クマよけの鈴が効果的です。
ツキノワグマは基本的に人間を怖がります。
クマに襲われてしまうよくあるパターンは、急に鉢合わせしてしまったときです。
そうならないためにも、人間の存在をクマ側に知らせておくのが大切なんです。
ツキノワグマが大きな耳を持っているのは説明しましたよね。
遠くにいても鈴の音を聞き取ることができ、こちら側には近づいてきません。
ツキノワグマが良そうな所へは行かない!
もし行くならクマよけの鈴を持っていく!
これでツキノワグマによる被害を限りなく抑えることができます。
もしツキノワグマに出会ってしまったら?
しかし、人間の味を覚えてしまったツキノワグマが、積極的に襲い掛かってくるようなケースが起こるかもしれません。
2016年の被害も、犠牲者が増えてしまったのはこの「人間の味を覚えたクマ」によるものだったと考えられています。
もし目の前にツキノワグマが現れてしまったらどうしますか?
最も効果的な方法は「目を見てゆっくり後ろに下がる!」です。
よく言う死んだふりは余計に危険です。
クマは死骸も食べる動物です。
目の前に動物の新鮮な死骸があれば飛びついてきます。
また、背中を見せてダッシュするのもNGです。
クマをはじめとする食肉目の動物は、動くものに飛ぶ掛かる習性があります。
しかもツキノワグマは時速40~50㎞で走れるハンターです。
人間が逃げられるレベルではないですね。後ろからガブッ!です。
さらに、クマをびっくりさせる行動も危険です。
子熊を連れている母熊なら必死に攻撃してくるでしょう。
睨みつけてゆっくり後退することで、クマに敵意がないことを示すことができます。
視界から抜けたら、人里へ向かいましょう。
また、木に登ることも意外と効果的らしいです。
ツキノワグマは木登りが得意ですが、獲物を追って木に登ることまではしません。
あくまで、果実を食べるためや身を隠すため程度です。
登れる木があれば、樹上で待機するのもありかもしれません。
木まで一瞬で行かないといけないうえに、一瞬で登らないといけないため、現実的には厳しいと思いますが、、、
クマよけスプレー、ナタなどの刃物を持っておくことも重要です。
実際にナタでクマを撃退した例もあります。
あとは、傘を急に開くのも効果的なようですので、折り畳み傘を携行しておくのも安心に繋がりますね。
とにかく、まず第一に考えないといけないのは、クマと遭遇しないことです。
クマよけの鈴、集団で行動するなど、できるだけクマが近づいてくることを避けましょう。
まとめ
ツキノワグマは日本以外にも生息しています。
それぞれの地域で、それぞれの生態を築いているんですね。
ニホンツキノワグマは小柄な方ですが、それでも人間を襲えるだけの強さは持っています。
襲われないためにも、ツキノワグマに出会わないことが重要です。
軽い気持ちで山に行くのはやめた方が良いですね。
ニホンツキノワグマが絶滅してしまった地域もあります。
これ以上生息数を減らさないためにも、ツキノワグマが住める「広葉樹林」を守っていくことが必要ですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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