ヤブイヌという動物を知っていますか?
藪の犬でヤブイヌ。
その名の通り、森の中で暮らす原始的なイヌの仲間で、1000万年も前から姿を変えていないんです。
ネコで言う「ヤマネコ」的な存在ですね。
ヤブイヌは原始的というだけあって、普通のイヌとは違う、変わった習性や特徴を持っています。
ヤブイヌは、どこでどんな生活をしているのでしょうか?
また、見れる動物園はあるのでしょうか?
今日はイヌ好きなら知っておくべき、イヌの祖先的な存在「ヤブイヌ」についてお話しします。
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ヤブイヌの特徴
Foto by Wikimedia
ヤブイヌは食肉目・イヌ科・ヤブイヌ属の哺乳類です。
ヤブイヌのみでヤブイヌ属を形成します。
体長55~75cmでしっぽの長さは10~15cmほどです。
体重は4~7kgなので、だいたい中型犬と同じくらいの大きさですね。
耳が小さいのが特徴です。
肩から地面までの高さは30cmと、若干足が短いです。ぽっちゃりなダックスフンドに見えますね。
短い足は藪のなかを駆け回るのに適しています。
しかも水かきまで持って、泳ぎも得意としています。
Foto by Wikimedia
全身に短い毛がびっしり生えていて、毛の色は暗い茶色から黒です。
ヤブイヌが暮らす森の中では暗い体色がカモフラージュの役割を果たしています。
短い足に水かき、森に溶け込むカラーと、藪の中で暮らすには最適な体を持っています。
まさにヤブイヌ!
ちなみに英名の「Bush dog」も「草藪の犬」という意味です。
飼育下での寿命は13年という記録があります。
ヤブイヌの生息地
ヤブイヌは南米の北部~中部の熱帯雨林に生息しています。
草原地帯で暮らすこともありますが、水辺を好む傾向にあるようです。
アリクイやアルマジロが住んでいた巣穴や岩場、木の根元の隙間などにを住処としています。
ヤブイヌは基本的に昼も夜も活動します。
しかし、人間による狩猟が盛んに行われている地域では獲物が少なくなるため、より狩りの成功率が上がる夜間に活動します。
活動はペア、もしくはその子どもたちで構成される小さな群れで行います。
家族一緒に行動するところは本当にかわいいです。
団結力が強いんですね。
ヤブイヌの食べ物
ヤブイヌは肉食性で、カピバラをはじめとするげっ歯類やアルマジロ、小型のイノシシ、バクといった小型哺乳類を獲物としています。
狩りは群れで行います。
面白いことに、ヤブイヌの狩りは穴掘りが中心です。
ネズミやアルマジロなどの巣を、集団で掘り返すんです。
しかも、穴を掘る担当、土を運び出す担当に役割分担しています。
家族だからこそできる連係プレーですね。
ヤブイヌは後ろ向きに走る!?
穴掘り名人のヤブイヌは、巣穴で生活しています。
アリクイやアルマジロの古巣を使いますが、自分達に合った大きさに改造しているようです。
巣穴はとても細く、足の短いヤブイヌでも1頭通るのがやっとです。
そこで、ヤブイヌが身に付けた技が「後ろ向きに歩く」です。
しかも結構なスピードで走れるようで、地上で身の危険が迫ったときでも後ろ向きに走れます。
逆立ちしてマーキング!?
イヌのマーキングは有名ですよね。
もちろんヤブイヌもマーキングをします。
南米のジャングルでは縄張りが大切です。
他の群れとケンカにならないように、頻繁にマーキングをすることが重要なんです。
余計な争いは体力の無駄ですし、ケガの恐れもあります。
しかも、ヤブイヌはかなり用心深い動物です。
それもそのはず、ヤブイヌが暮らす南米の熱帯雨林には、ジャガーなどの大型肉食動物がいます。
ヤブイヌは身を守るために、ほぼ毎日巣穴を変えます。
居場所を悟られないようにしているんです。
そんなときにもマーキングが大切です。
新しい巣穴に移動するとすぐにマーキングして、自分のテリトリーを主張するんです。
マーキングと言えばオスが足を上げて行うのが一般的ですよね。
他のイヌの鼻の高さにマーキングするためには、オスが足を上げて行うマーキングが効果的なんです。
ヤブイヌは面白いことに、メスもマーキングします。
ただし、メスはオスのように高いところにマーキングすることが難しいんです。
飼い犬でも、マーキングするのはオスで、メスはその場にしゃがみこんでおしっこをしますよね。
そこで、ヤブイヌのメスは木の枝に足を立て掛けて、逆立ちしてマーキングするんです。
短い足で一生懸命逆立ちする姿を見ると、頑張れお母さんって応援したくなりますね!
ヤブイヌの子育て
繁殖期のヤブイヌは交尾を終えると、1~6頭の赤ちゃんを産みます。
子どもたちは倒木の下や洞穴などで母親から授乳されます。
授乳期間は4~5ヶ月で、その間は授乳で忙しいお母さんに、お父さんが食べ物を運んであげるんです。
夫婦一丸となって子育てに奮闘しているんです。
子どもたちはだいたい10ヶ月ほどで性成熟すると言われています。
ヤブイヌと人間の関係
そんな健気に生きているヤブイヌですが、実は数を減らしつつある動物なんです。
現在は準絶滅危惧種に指定されています。
理由は住みかとなる森林の伐採や、狩猟による獲物の減少です。
ブラジルやペルー政府はヤブイヌの減少を重く受け止め、法的に保護の対象としています。
密猟者には厳罰が下されるため、狩猟対象から外されているみたいです。
ヤブイヌはペットにできない!?
ヤブイヌをペットとして飼うことはできません。
準絶滅危惧種に指定されているヤブイヌは、ワシントン条約にも登録されています。
そのため、国際的な取引には政府も関係してくるため、個人的に飼うことはほぼ無理なんです。
そもそも、これほどまでに野生に特化した動物を、人間の住宅で飼育するのは現実的じゃないですよね。
飼い主にもヤブイヌにも、ものすごいストレスがかかりそうです。
ヤブイヌを飼育している動物園
ヤブイヌはペットとして飼うことはできません。
でも安心してください。
日本国内の動物園にも、ヤブイヌを飼育しているところがあるんです。
現在ヤブイヌを飼育している動物園は6ヶ所です。
・よこはま動物園ズーラシア(神奈川県横浜市)
・京都市動物園(京都府京都市)
・埼玉県こども動物自然公園(埼玉県東松山市)
・平川動物園(鹿児島県鹿児島市)
・神戸どうぶつ王国(兵庫県神戸市)
・東山動物園(愛知県名古屋市)
※愛媛県立とべ動物園には京都市動物園から引越してきたヤブイヌが2頭展示されていましたが、その後死亡しています。
京都市動物園のヤブイヌ
京都市動物園ではお父さんのデンマルとお母さんのパパヤ、そしてその子ども達からなる総勢8頭ものヤブイヌが飼育されています。
ただ、これ以上繁殖してしまうと、今後ほかの動物園にブリーディングローン(繁殖のために他の園に動物を貸し出すこと)として移動した際、デンマルとパパヤの家系が広がってしまう可能性もあります。
そのため、現在はデンマルとパパヤが繁殖しないよう、別の場所に移して生活させています。
絶滅危惧種だからってむやみに繁殖させるのもよくないんだね、、、
京都市動物園のヤブイヌは広いお庭で走り回っています。
犬好きなら1度は見ておいた方がいいですよ。
全然立ち止まってくれない、、、
2019年8月追記
2019年9月2日から京都市動物園のミコト(♀)が埼玉県こども動物自然公園にブリーディングローンのためお引越しします。
ミコトは2才でデンマルとパパヤの子どもです。飼育員さんは『新しい場所で繁殖に成功し、今後ヤブイヌが増えてほしい』と国内でヤブイヌの飼育施設が増えることに期待しているようです。
よこはま動物園ズーラシアのヤブイヌ
日本の動物園の中でも特にヤブイヌの飼育に力を入れているのが「よこはま動物園ズーラシア」です。
ズーラシアでは過去に繁殖にも成功していて、他の動物園にヤブイヌを贈ることもあります。
ヤブイヌの子どもはある程度成長すると、兄弟同士でケンカが絶えなくなります。
本来なら巣立っている大きさになると、兄弟と言えども離してあげないといけないんです。
そのため、ズーラシアではヤブイヌの子どもがある程度成長すると他園に贈ることがよくあります。
20頭以上の群れを作るのは、子どもが小さいときだけです。
運が良ければ、生まれたばかりの子どもたちと両親が、家族のグループを作っているタイミングに出会えるかもしれません。
他の動物園のヤブイヌが成長すれば繁殖することもあります。
日本全国の動物園にヤブイヌが広がってくれれば、それだけ見れる可能性も増えますよね。
そうなると、ヤブイヌの群れを見ることができる可能性も高くなりますよね。
まとめ
・ヤブイヌはイヌの祖先とも言える原始的な動物
・その姿は1000万年前から変わっていない
・南米の森林や草原の中を駆け回るように暮らしている
・水掻きもあって、泳ぎも得意
・両親と子どもたちという、家族で群れを作る
・家族が協力して穴堀をして、狩りを行う
・メスは逆立ちしてマーキングする
・狭い巣穴でも後ろ向きに歩いて移動できる!
・生息地の開発によって絶滅が心配されている
ヤブイヌは飼い犬の祖先的な存在なんですね。
南米アマゾンの奥地に生息していたため、現代にも生き残れたのかもしれません。
開発による絶滅が心配ですね。
こんなに貴重な動物です。
みんなで守っていきたいですねり
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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