サメと言えば獰猛で危険な生き物を想像しますよね。
「人喰いザメ」なんていう言葉もあるくらいです。
しかし、中にはおとなしいサメもいるんです。
今日紹介する「トラフザメ」も、そんなおとなしくて危険性がないと言われているサメです。
「トラ」って付いているから怖そうなイメージですが、ダイビングで出会っても何もしてきません。
ダイバーの間でも人気なサメなんです。
トラフザメはどんなサメなんでしょうか?
また、飼育することはできるのでしょうか?
おとなしくて、かわいくて、ちょっぴりかっこいい「トラフザメ」に迫ってみましょう。
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トラフザメってどんなサメ?
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トラフザメ(虎斑鮫) | |
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学名 | Stegostoma fasciatum |
英名 | Zebra shark |
生息地 | インド太平洋、アフリカ大陸東側、オーストラリア北部、日本南部 |
全長 | 2.5m |
トラフザメはテンジクザメ目・トラフザメ科・トラフザメ属の魚類です。
トラフザメ科、トラフザメ属は本種のみです。
サメの仲間は全身の骨が軟骨でできている「軟骨魚綱」に分類されます。
ちなみに、アジなどのサメ以外の魚は「硬骨魚綱」に分類されます。
軟骨魚綱はより原始的な魚類です。
そのため、太古から姿を変えていないとも言われています。
トラフザメを含むテンジクザメ目には、魚類最大の大きさになる「ジンベエザメ」が含まれています。
ちなみに日本でジンベエザメと泳げる施設もあるんです。
トラフザメの生息海域
トラフザメはインド太平洋の熱帯海域に生息しています。
かなり幅広く分布していて、アフリカ大陸から日本の南部、オーストラリアの北部やニュージーランドまでその存在が確認されています。
海の底で暮らしている底生で、水深60mほどまでのサンゴ礁に多く生息しています。
トラフザメの特徴
トラフザメは全長2.5mほどまで成長します。
最大で3.5mの個体も観測されています。
体に比べて尾ビレが長く、遊泳力に優れていることを表しています。
軟骨魚特有の体をくねらせる泳ぎ方で、力強く泳ぎます。
頭部は円筒形で大きく、側面に小さな目があります。
目の後ろには目よりも大きな噴水孔が開いています。
また、口には短くて尖っている歯がびっしり並んでいます。
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歯は死ぬまで生え続けます。これはサメやエイなどの、軟骨魚綱が持つ特有の能力です。
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トラフザメの模様
トラフザメの一番の特徴は全身に広がる黒いまだら模様です。
ただし、この模様は大人の特徴です。
子どもの頃は黒地の体に白い縞模様という、大人とはかなり違う特徴を持っています。
英名の「Zebra shark(シマウマザメ)」はこれが由来です。
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ちなみに他にも「Leopard shark」という英名もありますが、イタチザメもこのように呼ばれることがあるため、一般的ではありません。
また、トラフザメは漢字で書くと「虎斑鮫」です。
「虎」は子どもの頃の縞模様、「斑」は成魚のヒョウ柄模様が由来です。
幼魚と成魚、それぞれの特徴を合わせた名前だったんですね。
子どもから大人になる中間的な状態の時は、縞模様とまだら模様が入り交じっています。
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ちなみに以前までは成魚と幼魚の見た目が全く違うため、別種とされていたこともあります。
子どもと大人の体色が全然違うのは「魚あるある」ですね。
トラフザメの生態
トラフザメは夜行性です。
昼間は海底でじっとしています。
ただし、海流のないところでは呼吸ができないため、流れてくる方向に顔を向ける必要があります。
流れが強くなる、岩と岩の隙間の水路で休むことが多いようです。
夜になるとエサを求めて活発に動き出します。
群れは作らずに単独で生活していることが多いのですが、オーストラリアのクイーンズランド南東では、毎年夏になると数百匹の群れが観測されています。
特に群れ内で繁殖行動をするわけでもないため、群れる理由は不明です。
長距離の移動は基本的にしませんが、過去には同じ個体が140kmも泳いでいたという記録もあります。
長い尾ビレにより、長距離も遊泳できるようです。
トラフザメの食べ物
トラフザメは肉食性で、貝類や甲殻類をボリボリと噛み砕くことができます。
魚も、口に入る大きさであれば食べることができるようです。
また、ウミヘビを食べていることも確認されています。
岩の隙間でもやわらかい体でくねくねと入り込むことができます。潜んでいるウミヘビでも食べることができるんです。
口の筋肉が発達していて、海底や岩の隙間に潜んでいる獲物を、海水と一緒に吸い込むことができます。
トラフザメの繁殖
トラフザメは卵生です。
交尾はオスがメスの胸ビレや尾ビレに噛みつき、押さえつける形で行われます。
海底でオスがメスの体に巻き付き「クラスパー」と呼ばれる腹ビレが変化した「交尾器」を差し込みす。クラスパーには精子を送り込む役割があります。
交尾は2~5分間続きます。
また、オスがオスの胸ビレに噛みついて、海底に押さえつける行動も観察されています。
押さえつけられたオスはあお向けになってしばらく動かなくなります。
これは自分の強さをアピールしていると考えられています。
トラフザメの卵
サメの卵は他の魚の卵とは違い、岩や海草に卵を固定するために様々な形状をしています。
「卵鞘(らんしょう)」とも呼ばれます。
トラフザメの卵鞘は粘着性のある繊維が生えています。
この繊維が岩などにくっつくことで固定されます。
4個の卵を1束として出産するようです。
野生下で卵が孵化するまでの期間は分かっていませんが、飼育下では4~6ヶ月で孵化します。
生まれたばかりの赤ちゃんの全長は20~36cmほどで、大人に比べて尾ビレが長いのが特徴です。
また、先ほど説明した通り、縞模様が入っています。
縞模様の理由としては、模様で輪郭がぼやけてしまい、1匹に狙いを定めるのが難しくなるためだと考えられています。
トラフザメは単為生殖する!?
飼育されているサメが単為生殖、つまりオスと交尾せずに子どもを産むことは結構確認されています。
以前交尾したオスの精子が残っている場合もありますが、完全にオスと接点を持たなかったメスですらも単為生殖することがあるんです。
これは水族館などのオスがいない状況でも生き残るための手段だと考えられています。
この単為生殖はトラフザメでも確認されています。
子孫を残せるというメリットはあるものの、遺伝子が母親のものしか受け継がれないため、感染症や環境の変化に弱いというデメリットがあります。
通常はオスとの遺伝子が混ざりあうことで、遺伝子が多様性を築き、より強い子孫を残していくものなんです。
トラフザメと人間の関係
ダイナマイト漁の様子
東南アジアでやアフリカで行われている「ダイナマイト漁」により、他の魚と一緒にトラフザメが混獲されてしまうことがあり、生息数が減少している海域もあります。
肉は塩漬けや干物に、ヒレはフカヒレにといったように様々な加工品にできるうえ、肝油からはビタミンも生成できます。そのため、生息海域では底引き網を用いた漁が行われています。
トラフザメは生まれた海域からほとんど出ないため、漁業の影響で数を減少させている海域もあります。
レッドデータブックのカテゴリーは「絶滅危惧種ⅠB類」です。
ただし、オーストラリアではわずかな混獲のみが発生しているため、絶滅の危険性は低いとされています。
トラフザメがいる水族館
トラフザメは日本中、多くの水族館で飼育されています。
東北・北海道
・おたる水族館(北海道)
・登別マリンパーク ニクス(北海道)
・青森県営 浅虫水族館(青森県)
関東
・鴨川シーワールド(千葉県)
・アクアワールド・大洗(茨城県)
・サンシャイン国際水族館(東京都)
・横浜・八景島シーパラダイス(神奈川県)
・箱根園水族館(神奈川県)
関西・中国の水族館
・海遊館(大阪府)
・神戸市立 須磨海浜水族園(兵庫県)
・島根県立 しまね海洋館 AQUAS(島根県)
九州・沖縄の水族館
・マリンワールド 海の中道(福岡県)
・海洋博公園 沖縄美ら海水族館(沖縄県)
トラフザメは飼育できるの?
個人的に飼育することはできますが、成魚になると全長は2mを越えます。
個人がこれほど大きな海水水槽を準備するのは現実的とは言えません。
飼育するよりは水族館に見に行った方がよさそうです。
トラフザメはダイバーに大人気
おとなしいトラフザメは人間に対して危害を加えてくることは滅多にありません。
こちらからちょっかいを出した場合は噛みついてくるようです。
あたり前ですね、、、
熱帯海域に生息しているため、ダイビングにもぴったりです。
サメを見たいと思っているダイバーにはとても人気なんです。
また、人に慣れると体を触らせてくれることもあるようです。
海外ではトラフザメと一緒に泳ぐショーも開催されているみたいですよ。
まとめ
トラフザメはサメの「怖い」というイメージを変えてくれる、おとなしいサメです。
海底にじっとしている姿は癒されますね。
しかも結構大きいので迫力もあります。
他のサメにインパクトを持っていかれますが、トラフザメがいる水族館へ行った際には、ぜひ注目してあげてください。
絶対ファンになりますよ。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
小学5年生のものです。夏休みの自由研究に、のせたい写真があるので、使ってもよろしいでしょうか。よろしくおねがいいたします。
コメントありがとうございます。こちらフリー素材を使用しております。Wkimediaにてダウンロードできますので、そちらにて「zebra shark」と検索すればいっぱいあります。ぜひ利用してみてください。自由研究頑張ってくださいね。
お返事ありがとうございます。
サメの歯の標本の画像を使用したいと思っていて、こちらのブログではもう削除されているようなのですが、そちらは使えないのですか?
コメントありがとうございます。前の画像は削除しました。現在の画像はどうですか?こちらもWikimediaのものです。個人で使用する分には問題ないと思います。
ありがとうございます!たすかりました。