ユキヒョウはチベットやヒマラヤ山脈などの山岳地帯に生息するネコ科動物で、名前の通り雪のように白く美しい外見を持っています。
標高の高い場所で暮らしているため、なかなか姿を現すことがなく、現地では「山の幽霊」と呼ばれることもあります。
その美しい毛皮は世界中で人気です。
それは同時に、ユキヒョウが狩猟の対象になっているとも言えますよね。
実際にユキヒョウは生息数を減らしていて、絶滅危惧種に指定されています。
幻の動物「ユキヒョウ」とはどのような生態なのでしょうか?
また、日本でユキヒョウを見ることができる動物園はあるのでしょうか?
今日は世界で最も美しい動物のひとつと言われる「ユキヒョウ」に迫ります。
好きなところにジャンプできます
ユキヒョウの特徴
ユキヒョウは食肉目・ネコ科・ヒョウ属の哺乳類です。
系統的にトラに最も近いことが、遺伝子の調査によって判明しています。
体の特徴
体長100~150cm、体重は45~55kgです。メスよりオスの方が若干大きくなります。
がっしりして見えるのは、モフモフな毛によるもので、意外と体重は軽いんです。
冬場の体毛は12cm、夏場は5cmと、冬と夏で体毛の長さが変わります。
温度差の激しい高山地帯でも耐えられるように、毛の長さを変えられる体に進化したんですね。
しっぽは100cmほどで、体と同じくらいまで長くなります。しかも結構太いです。
ユキヒョウが暮らしている山岳地帯は岩が多く斜面だらけで、雪も降り積もります。
長く太いしっぽは、バランスをとるために役立っているんです。
背中や体の側面は青みがかったグレーで、黒いブチや縁取りの模様が入ります。
お腹側は白い体毛で覆われています。
清潔感に溢れていますね。
白地に灰色ということで、雪や岩に溶け込むような体色です。
足の平が幅広く、雪に沈まない造りになっています。
この足のおかげで岩場、雪原など、足場の悪い場所でも素早く動くことができます。
顔の特徴
目は顔の上の方に位置しています。
岩に隠れながら狩りをするユキヒョウは、顔を最小限だけ出して獲物の位置を確認する必要があります。
そのため、額が狭くなっているんです。
同じような地域で暮らしているマヌルネコも、このような特徴を持っています。
マヌルネコもユキヒョウと同じように隠れながら狩りを行います。
イエネコと比べても、ユキヒョウやマヌルネコの目の位置が、顔の上にあることが分かると思います。
また、ユキヒョウはベロの構造上、吠えることができません。
鳴き声は出すことができるようですが、ライオンなどのような咆哮は出せないようです。
これは同じネコ科のウンピョウと同じ特徴です。
ユキヒョウの生息地
ユキヒョウはチベット、インド北部、ロシア南部、ネパールなどの中央アジアの高山地帯に生息しています。
ヒマラヤ山脈、アルタイ山脈、天山山脈、ヒンドゥークシュ山脈、パミール高山に分布しています。
標高600~6000mまでを移動し、岩場、草原、高さのない針葉樹林などを住みかとしています。
獲物の動きに合わせて、夏場は標高の高い地域、冬場は低い地域に移動します。
夜行性で、昼間は岩の隙間、断崖の上、ヒゲワシが使っていた巣などで休んでいます。
ただし、完全に夜行性というわけではなく、昼間に活動することもあります。
ユキヒョウの生態
ユキヒョウの食性
ユキヒョウは完全に肉食性です。
ウシの仲間のバーラル、アルガリ、ゴーラルを主な獲物としています。
小型のネズミやウサギといった、げっ歯類、鳥類なども捕食します。
地域によっては人間の家畜を主な獲物としているユキヒョウもいます。
身体能力に優れていて、一飛びで15mもの距離をジャンプすることがあります。離れた距離から、突然獲物に飛びかかります。力も相当強いです。
このジャンプはムササビジャンプと呼ばれ、動物園で見せることもあります。
ユキヒョウの繁殖
ユキヒョウは胎生で、毎年1月~5月に交尾を行います。
この時期はオスとメスがつがいで行動し、狩りも協力します。
1回の出産で2~3頭の赤ちゃんを産みます。
出産は木の穴や洞窟で行われ、母親は自分のお腹の毛を抜いて、ベッドを作ります。
赤ちゃんは生後7日ほどで目が開き、2週間ほとで固形物を食べ始めます。
授乳期間は5ヶ月ほどです。
ユキヒョウの寿命
野生のユキヒョウの寿命は13~15年ほどと言われています。
ただ、施設によっては20年以上生きている個体もいるため、飼育下では寿命が長くなるようです。
最も長寿だと言われているのが多摩動物公園で飼育されていた、オスの「シンギズ」で、推定26才で亡くなっています。
ユキヒョウと人間の関係
ユキヒョウは現在、絶滅危惧種に指定されています。
ユキヒョウが数を減らした原因は、
・美しい毛皮目的での乱獲
・地球温暖化が原因で、生息地の森が暑さに耐えられなくなり、枯れ始めている
・エサとなる小動物が減っているため、エサを求めて家畜を襲い、人間に駆除される
・ヒマラヤ地方に人間がどんどん入植し、生息地が狭くなっている
などがあげられます。
ワシントン条約にも記載されているユキヒョウは、商業目的で捕獲することが国際的に禁止されていますが。
しかし、毛皮目的で密猟を行う人間はいます。
また、ユキヒョウが人間の生活地域に入ることを防ぐために柵を設置するといった保護活動も行われています。
家畜を襲われた現地住民は、報復のためにユキヒョウを殺してしまうのがほとんどです。
そうならないためにも、ユキヒョウが人間のテリトリーに入らないように工夫することが必要なんですね。
ユキヒョウの毛皮は100万円以上で取引されることがあります。
富裕層のツールと化しているのかもしれません、、、
ユキヒョウの数は回復してきている
ユキヒョウが絶滅危惧種に指定された1972年には、その生息数は2500頭未満でした。
そのため、この時はレッドデータブックのカテゴリーは「絶滅危惧種ⅠB類(EN)」に指定されています。
それから30年以上に渡り、献身的な保護活動を行った結果、現在は8000頭以上の生息数に増えています。
現在のカテゴリーは「絶滅危惧種Ⅱ類(VU)」です。
これは保護活動の成果であり、とても喜ばしいことなのですが、依然として絶滅危惧種であることに変わりはありません。
ここで気を抜いてしまえばまた数を減らしてしまう可能性は十分にあります。
ただ、数を激減させてしまったユキヒョウが増えてきているのは本当に嬉しいですね。
地球温暖化が関係しているということは、私たちと無関係ではありません。
ユキヒョウが飼育されている動物園
現在ユキヒョウの飼育が確認できている動物園は9ヶ所です。
・多摩動物公園(東京都日野市)
・円山動物園(北海道札幌市)
・旭山動物園(北海道旭川市)
・王子動物園(兵庫県神戸市)
・東山動物園(愛知県名古屋市)
・大牟田動物園(福岡県大牟田市)
・群馬サファリパーク(群馬県富岡市)
・浜松市動物園(静岡県浜松市)
・大森山動物園(秋田県秋田市)
※熊本市動植物園のユキヒョウは地震による被災で福岡県の大牟田動物園にお引っ越ししました。
多摩動物公園のユキヒョウ
東京都日野市にある多摩動物公園では2017年6月2日にユキヒョウの赤ちゃんが産まれてます。
フクと名付けられた男の子で、お母さんと一緒に展示されています。
ただでさえ美しくてかわいいユキヒョウの「赤ちゃん」です。
見るべきですね。
円山動物園のユキヒョウ
北海道札幌市の円山動物園では過去に何度もユキヒョウの繁殖に成功していて、他の動物園に贈っています。
2011年にはスウェーデンからメスの「ジジム」もやってきていて、さらに繁殖に力を入れていきそうです。
旭山動物園のユキヒョウ
北海道旭川市の旭山動物園でも2016年にユキヒョウの赤ちゃんが生まれています。
現在は秋田県の大森山動物園にお引っ越ししましたが、両親の母親のジーマと父親のヤマトは現在も旭山動物園で暮らしています。
今後も繁殖に成功すれば、日本各地の動物園でユキヒョウが見れそうですね。
王子動物園のユキヒョウ
兵庫県神戸市の王子動物園ではメスのユッコが飼育されています。
2006年に王子動物園にやってきたオスのティアンが2016年に13才で亡くなってしまったのですが、ユッコは現在も元気に暮らしています。
いつか、他のユキヒョウが王子動物園にやってきて、ユッコと結ばれてくれると嬉しいですね。
東山動物園のユキヒョウ
2018年にオスのコハクを浜松市動物園に贈りますが、現在もオスとメスが1頭ずつ飼育されています。
赤ちゃんが生まれれば、日本中にユキヒョウが増えそうですね。
大牟田動物園のユキヒョウ
福岡県大牟田市の大牟田動物園では、熊本市動植物園で被災してしまったユキヒョウを受け入れています。
展示スペースの入口を解放したため、運が良ければユキヒョウが見られるかもしれません。
ただ、奥の部屋に入ってしまうと、見ることはできません。
群馬サファリパークのユキヒョウ
群馬県富岡市の群馬サファリパークにはウォーキングエリアでユキヒョウを飼育しています。
オスのヨシダ君とメスのマイちゃんの2頭で、毎日のんびり生活しているようです。
浜松市動物園のユキヒョウ
静岡県浜松市の浜松市動物園では、2018年に円山動物園からメスのリーべが、東山動物園からオスのコハクがお引っ越ししてきています。
ユキヒョウの繁殖に力を入れていくそうで、徐々に対面させているようです。
日替わりで1頭ずつが展示されています。
大森山動物園のユキヒョウ
秋田県秋田市の大森山動物園では2018年3月31日に旭山動物園からオスのリヒトがお引っ越ししてきました。
2018年4月下旬より展示が開始されるようです。
大森山動物園では8年ぶりとなるユキヒョウの飼育です。
※ユキヒョウは繁殖のために日本各地の動物園に移動することがあります。
動物園にお出掛けの際は、ユキヒョウがいるかどうかを各園に確認してください。
世界中でユキヒョウの繁殖に力を入れている
ユキヒョウは世界的にも数が少ない動物です。
そのため、世界中の動物園で保護のための繁殖が行われています。
日本でも海外からのユキヒョウの受け入れや日本各地の動物園同士のネットワークにより、繁殖が行われています。
実際に繁殖に成功し、他の動物園にお引っ越ししたユキヒョウもいます。
今後も世界中でユキヒョウの保護が進んでほしいですね。
まとめ
ユキヒョウは美しい毛皮をもつ幻の動物です。
現地では山の幽霊と呼ばれるほどに珍しいんです。
雪山で生活できるように進化してきたユキヒョウですが、乱獲や生息地の開発で数を減らしてしまいました。
献身的な保護で生息数は回復しつつあります。
動物園での繁殖も、保護活動の一環ですよね。
種を保全するためにも、動物園同士のネットワークが大切なようです。海外からの受け入れも積極的に行っています。
これほど美しい動物を絶滅させてはいけませんよね。
私たちにもできることがあるはずです。
みんなでユキヒョウを守っていきましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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