皆さんは大型ネコ科動物と聞いて何を思い浮かべますか?
ライオンですか?トラですか?
実は地球上で最も繁栄に成功している野生のネコ科動物は「ヒョウ」なんです。
ヒョウはアフリカ、アジア、ロシアまで幅広く分布しています。
分布域が広いということは、それだけその地域の生存競争に打ち勝っているということですよね。
ヒョウは巧みな狩りの技術によって、ネコ科No.1の成功を収めました。
地域によってヒョウの生活は違うのでしょうか?
狩りが上手いのはなぜでしょう?
ネコ科最高峰の狩りの名手「ヒョウ」に迫ってみましょう。
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ヒョウの分類はどんな感じ?
ヒョウ | |
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学名 | Panthera pardus |
英名 | Leopard |
生息地 | アフリカ大陸、アラビア半島、インド、中国、ロシア東部 |
体長 | オス:140~190㎝ メス:120㎝ |
体重 | オス:40~90㎏ メス:30~60㎏ |
ヒョウは食肉目・ネコ科・ヒョウ属の哺乳類です。
ヒョウ属には他にも、ライオン、トラ、ジャガーが含まれます。
食肉目は別名「ネコ目」とも呼ばれていました。
大規模な肉食動物のグループでイヌ科、クマ科、イタチ科なども食肉目に分類されます。
ヒョウの生息地はどこ?
ヒョウはアフリカ大陸、アラビア半島、東南アジア、中国北東部、ロシア極東部を生息地としています。
アフリカのサバンナや砂漠地帯、アラビア半島の乾燥地帯、東南アジアの熱帯雨林、ロシアや中国の寒冷地帯など、様々な環境に適応しています。
さらに、標高5000m以上のキリマンジャロやヒマラヤ山脈までも生息地としていています。
ネコ科動物では最も広く、様々な地域に分布していて、地域によってそれぞれの生態を築いています。
そのため、同じヒョウですが地域によって9つの亜種が存在しています。
・アフリカヒョウ(サハラ砂漠より南のアフリカ)
・インドヒョウ(インド地方)
・ジャワヒョウ(ジャワ島)
・アラビアヒョウ(アラビア半島)
・アムールヒョウ(ロシア極東部や中国北東部など)
・キタシナヒョウ(中国北部)
・ペルシャヒョウ(コーカサス地方やトルクメニスタン、イラン北部など)
・インドシナヒョウ(東南アジア)
・スリランカヒョウ(スリランカ)
ヒョウの特徴
ヒョウはオスの体長が140~190cm、体重は40~90kgです。メスの体長の平均は120cm前後、体重は30~60kgと、オスよりも一回り小さいですね。
ネコ科の中では大きい方ではありません。スラッとしている印象です。
しっぽは100cmになることもあり、体と同じくらいの長さになります。木登りを得意としているため、バランスをとるのに役立っていると考えられます。
体毛は全体的に柔らかく、暑い地域では短く荒く、逆に寒い地域では長く密集して生えています。
地域に合わせて体毛の生え方が変化しているんです。
体色は黄色や褐色で、お腹側は白く、全身に特徴的な斑点模様が入ります。
斑点は頭やお腹、しっぽは黒い点のみですが、胴体側面や背中は花柄のような模様です。
この模様は梅の花に例えられるほど美しいとされています。
斑点模様は保護色の役割を果たしています。
目立ちそうな色ですが、なぜか木の上や草の中にいるヒョウは見えづらいんです。
自然界の中ではヒョウ柄は、隠れ身に最適な模様なんですね。
クロヒョウはヒョウの突然変異!?
「かたあしだちょうのエルフ」という絵本を知っていますか?
この絵本の表紙にもなっていて、最後にエルフ達を襲ってくる動物がクロヒョウです。
私は、この絵本を読んでから20年近く経ちましたが、今でも内容を忘れることができません。
それほど衝撃的で、感動をもらった絵本です。
大人が読んでも泣けます。おすすめです。
さて話が逸れましたが、実はヒョウとクロヒョウは同じ動物なんです。
クロヒョウは劣性遺伝子によって生まれた、ヒョウの突然変異です。
遺伝子には優勢と劣性というものがあります。
要は遺伝しやすいか、しにくいかということですね。
小学校か中学校の理科の実験で、ソラマメのシワについて勉強しますが、あれが優勢と劣性のお話です。
体毛が黒くなる「クロヒョウの劣性遺伝子」を持った親同士が子どもを作るとき、低確率でクロヒョウが生まれます。
確率で言えば4分の1です。
ただし、そもそもで劣性遺伝子を持っているヒョウ自体が少ないため「持っているヒョウ同士」が出会う確率を含めると、クロヒョウが生まれる確率はさらに低くなります。
ちなみに、クロヒョウにもちゃんとヒョウ柄模様が入っているんです。
赤外線を当てれば見えるみたいですよ。
おしゃれですよね。
クロヒョウはインド南部やマレー半島、スリランカなどで多く見られます。
そのため、この辺りにクロヒョウの遺伝子を持ったヒョウが多く存在していると考えられます。
ヒョウとジャガーの見分け方は?
ヒョウに似ているネコ科動物に「ジャガー」がいます。
ジャガーは南米アマゾンのジャングルを住みかとしているため、そもそもで生息地が違います。しかし、目の前にヒョウとジャガーが現れれば、どっちがどっちか分からなくなりますよね。
違いは何なの?
ヒョウとジャガーの違いは、まず体の大きさです。
ヒョウが最大で150cm、体重が80kgなのに対し、ジャガーは180cm、大型のものは体重100kgを越えます。
ヒョウよりもジャガーの方が大きく、がっしりしているんです。
さらに、体の模様ですが、ジャガーの花柄模様は中心部分に点が入ります。
一方、ヒョウの模様は花のフチのみです。
近くで見ると一目瞭然ですが、ぱっと見ただけでは分からないですよね。
ヒョウとチーターの違いは?
チーターはジャガーほどヒョウに似ていないため、一目で分かる人も多いと思います。
まず、チーターの大きさですが、体長は最大で150cm、体重は70kgほどです。
ヒョウをさらにスラッとさせた体型です。
また、ヒョウよりも小顔です。
チーターの体の模様は、黒い斑点のみで、ヒョウのような花柄模様ではありません。
黒い水玉模様ですね。
左右の目からアゴに入るラインも、チーター特有です。
顔や体の模様の違いを知っていれば、一目でどちらか判別できますね。
ちなみに、チーターにもクロヒョウと同じような、劣性遺伝子を持った突然変異が存在します。
こちらは「キングチーター」と呼ばれます。
普通のチーターは斑点模様がきれいな丸ですが、キングチーターの斑点模様は崩れてしまい、隣と繋がっています。
ペンキをかけたような模様ですね。
ヒョウはどんな生態を持っているの?
ヒョウは夜行性です。
昼間の暑い時間帯には、木の上、背丈の高い草の中、岩の隙間などで休んでいます。
昼間でも涼しければ活動しますが、夕方から動き出すことの方が多いようです。
基本的には単独で行動します。狩りも単独で行います。
数頭が一緒に行動し、獲物を捕らえることもありますが、ほとんど観察されていません。
鳴き声をあげたり、吠えたりすることはあまり無いと言われています。
ヒョウの食べ物は何?
ヒョウは肉食性ですので、狩りを行います。
中型哺乳類のシカ、ガゼル、インパラなどや、小型哺乳類のハイラックスなど、さらには鳥類や爬虫類など、その地域で狙いやすい動物を獲物としています。
時には体重900kgを越えるエランドという大型のシカを襲うこともあります。
一説には「ヒョウは自分の10倍の大きさの動物を仕留めることができる」とも言われています。
アジア地域のヒョウはパンダやレッサーパンダも食べてしまいます。
サルやゴリラなど、ジャングルに生息している動物も獲物の範囲です。
他にも、チーターや単独のハイエナから獲物を奪うこともあります。
ヒョウは獲物としている範囲がとても広い動物なんです。
ジャンプすることで有名な「スプリングボック」も、ヒョウの獲物です。
どれだけジャンプで逃げようと、ヒョウの狩りの腕を持ってすれば仕留めることができます。
ヒョウは狩りの天才!
ヒョウは単独で狩りを行いますし、体も大きいわけではありません。
では、どうしてここまで大型の動物も倒せるのでしょうか?
それにはヒョウの狩りの上手さと、身体能力の高さが関係しています。
ヒョウの狩りは基本的に待ち伏せスタイルです。
樹上や草の中に潜み、獲物が通りかかったら一気に襲いかかります。
体のサイズが丁度良いため、いろんな所に身を隠せるんです。
大きすぎると隠れきることができませんし、そもそもで木に登ることもできませんからね。
さらに走るスピードも速く、獲物を追いかける際は時速60kmにも達します。一瞬の加速もとても速いです。
跳躍力もすさまじく、2.5mもの高さまで飛び上がることができます。
そして、極めつけがその力の強さです。
アゴの力、足の力がとても強く、自分と同じ体重の獲物をくわえて木に登れるほどです。
ライオンやブチハイエナなど、他の大型肉食動物から獲物を横取りされないように、樹上でゆっくり食べるんです。
大きすぎず小さすぎない体によって、身を隠すことや木に登ることに優れ、身体能力も高い!
ヒョウがネコ科で最も成功している理由が分かってきましたね。
ヒョウは住宅街にも進出している!
インドの住宅街に近い森林にもヒョウが生息しています。
住民にとってはとても迷惑なようです。
夜行性のヒョウが、夜な夜な家畜を襲っているんです。
最近では人間を襲うヒョウも現れているんだとか、、、
ヒョウは様々な環境に適応できる動物です。
その地に合った暮らし方、効率の良い狩りを行います。
人間を襲うことが簡単ならそれを続けるでしょう。
適応力に優れているんです。
これも、ヒョウが地球上で繁栄できている理由でもありますね。
ヒョウの繁殖
ヒョウは一夫一婦や一夫多妻など、決まった繁殖形態を持っていません。
妊娠期間90~105日程で、普通は2~3匹の赤ちゃんをを洞穴や岩の割れ目、樹洞や繁みなどに出産します。
生まれたばかりの子どもの体重は400~650g程で、目は閉じています。
1週間から10日程で目が開き、生後2週間ほどで歩きだします。
6~8週間ほどで巣を離れるようになり、この頃から肉を食べ始めますが、生後3ヵ月頃までは授乳が続きます。
子どもは18~24ヶ月程で巣立ちますが、しばらくの間は母親の行動範囲に留まり、その後完全に独立していきます。
オスもメスも2~3歳で性成熟します。
ヒョウの寿命はどれくらい?
野生のヒョウの寿命は平均して10~12年程度だと言われています。
長ければ17年ほどは生きられるようです。
飼育下では長くなる傾向にあり、21~23年生きると言われています。
ヒョウの天敵は誰?
野生のヒョウの平均寿命が低い理由に、天敵の存在があります。
ヒョウは幅広く分布しているため、それだけ天敵の種類も多いです。
アフリカ大陸ではライオンやブチハイエナ、アジア地方ではトラが天敵です。
子どものヒョウが襲われることが多いのですが、大人が襲われることも珍しくありません。
天敵の存在がヒョウの寿命を縮めているんです。
ヒョウは絶滅危惧種!?
幅広い地域に生息しているヒョウですが、実は絶滅危惧種に指定されています。
ヒョウだけではありません。
ライオンやトラ、ジャガーやチーターなど、大型ネコ科動物は全て、絶滅の心配があるとして「レッドデータブック」に登録されています。
普通に動物園で飼育もされているため、見慣れた動物達ばかりですよね。野生の大型ネコ科動物は数を減らしているんです。
ヒョウが絶滅危惧種に指定されている理由は、毛皮目的の狩猟や害獣としての駆除、生息地である森林の開発による影響です。
特に、開発によって生息地が分断されてしまうと繁殖できなくなってしまい、その地域のヒョウが絶滅してしまう恐れがあります。
ワシントン条約の保護下ではありますが、毛皮は美しくとても人気です。そのため、密猟が後を絶たないようです。
ヒョウ柄が好きな人もいますが「本物じゃなくてもいいんじゃない?」って思っちゃいますね。
まとめ
ヒョウは、
・大きすぎず小さすぎない絶妙な体の大きさ
・待ち伏せや奇襲を可能にする身体能力の高さ
・地域によって狩りやすい獲物を仕留める適応力の高さ
これらの特徴によって、ネコ科で最も広く分布することができています。
熱い地域から寒い地域にまで生息しているのはすごいことですよね。
人間並みに繁栄しているとも言えます。
乱獲や駆除、開発によって数を減らしています。
保護も進められているため、持ち前の適応力で絶滅の危機を乗り切ってほしいですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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