スローロリスは東南アジアの熱帯雨林で暮らしているサルの仲間です。
大きな瞳にゆっくり動くことが特徴で、最近ではペットとしても人気が出ています。
名前にスローと入るだけに、かなりのんびり動くスローロリスですが、実は毒を持っていることが分かっているんです。
毒を持つ哺乳類は世界中にも数種類しかおらず、サルの仲間で毒を持つのはスローロリスのみです。
スローロリスが毒を持つのはなぜでしょうか?
また、毒性の強さはどれくらいのなのでしょうか?
熱帯雨林のユルカワ動物、スローロリスの生態を紹介します。
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スローロリスってどんなサル?
Foto by Wikimedia
スローロリスは霊長目ロリス科スローロリス属の哺乳類です。
名前にリスって入ってますし、顔も小動物感がありますが、人間と同じ霊長目です。サルの仲間ですね。
現在までに
・ベンガルスローロリス
・ボルネオスローロリス
・ジャワスローロリス
・ピグミースローロリス
・スンダスローロリス
という5種類が確認されています。
ただしどの種類も見た目はほとんど変わらず、見分けるのは難しいです。
ペットとして飼われるのは、ピグミースローロリスが多いようです。
体の大きさは頭からおしりまでが20~40cmほど、体重は400g~600gしかありません。
しっぽはおしりの毛に埋もれてしまうくらいとても短いです。
体色は赤みの強い茶色が多く、背中に1本の黒いラインが入るのが特徴です。お腹は白っぽい灰色で、少し明るい色をしています。
全身の毛はフワフワ、モフモフです。
瞳がとても大きく、スローロリスの人気ポイントの1つです。クリックリです。
目の回りを縁取るリングが、目の大きさを際立たせています。
小さい耳がちょこんとついていて、これまた目の大きさを助長してますね。
困った顔に見えることもあるため、本当にかわいいです。
そして、犬みたいに鼻はずっと湿っています。
中指が短いという特徴的な手で、木をつかんで移動します。
そのため握力がとても強いらしいです。
人間にしがみつくときも結構強くつかむみたいですよ。
スローロリスの寿命
スローロリスの野生での平均寿命は15~18年だと言われています。
ただし、スローロリスはかなり臆病で神経質な動物です。
そのため、飼育下での寿命は10年ほどにまで短くなってしまいます。
デリケートな動物なので、病気にかかるリスクも高いみたいです。
スローロリスの生息地
スローロリスの仲間は全て、東南アジアの熱帯雨林で暮らしています。
一生のほとんどを木の上で過ごす、樹上生活者ですね。
種類によって住んでいる地域が若干違います。
スローロリスの生態
スローロリスは夜行性です。
昼間は木の穴や枝分かれした木の間などで身を丸めて休んでいます。
基本は単独で眠っていますが、何匹かが集まって眠ることもあるようです。
夜になると活発に動きますが、動くときは跳び跳ねたりはせずに、ゆっくり確実に枝をつかみながら移動します。
このときにスローロリスの強い握力が役に立っているんです。
指2本で枝にぶら下がることだってできちゃうんです。
また、全身の毛が触角のような役割を持っていて、葉っぱにぶつかることすらありません。
全く音をたてずに動くことができるんです。
動くスピードはとっても遅く、名前の通りです。
1m進むのに何十分もかかることだってあるんです。
危険を感じると全く動かなくなったり、逆に安全なときはすいすい歩いたりもします。
とても臆病な性格なんです。
スローロリスの食べ物は何?
Foto by Wikimedia
スローロリスは雑食性です。
大好物は樹液で、花の蜜も好んで食べます。
また、果実も食べるようです。
雑食性ということで、昆虫やクモなんかも食べます。
さらには小鳥の卵や小鳥自体も食べてしまうんです。
意外にも大食漢なんです。
スローロリスの狩りはどんな感じ?
スローロリスは雑食性なので、昆虫や小動物などを捕まえて食べます。
しかし動きが遅いスローロリスが、一体どうやってすばしっこい獲物を捕まえるのでしょうか?
夜行性のスローロリスが夜に狩りを行うことも関係していそうですが、いくら獲物が眠っているとは言え、ジャングルは危険がいっぱいです。
捕食対象の小動物が、簡単に捕まえられるほど熟睡しているとは考えられません。
実はこれには、スローロリスの遅さが関係しています。
昆虫や小鳥などはあまりにも遅いスローロリスのことが見えていないようなんです。
背景の一部にでも見えているのかもしれません。
世界中の捕食者のほとんどはスピードというスキルによって、獲物を捕らえますよね。
相手よりも速く走れば、それだけ狩りの成功確率は上がります。
またはヒョウのように草むらや木の上に隠れて急に襲いかかるのも、獲物にとってはたまったものじゃありません。
しかしスローロリスは、逆に遅さを極めたんです。
一見、ゆっくり動くのは簡単に見えますよね。でも待ってください。
素早く動くのにもエネルギーを使いますが、ゆっくり動くのにも大量のエネルギーを使うんです。
10mを1時間かけて歩いてみてください。絶対途中でやめたくなりますよ。
スローロリスは遅さを極めることで、逆に狩りの成功確率を上げているんです。
ゆっくり動くのには理由があったんですね。
遅い動物の代表と言えば「ナマケモノ」です。
ナマケモノは葉っぱをエサとしていて、ほとんどエネルギーを得ることができません。
スローロリスと違って「早く動きたくても動けない」ということですね。
スローロリスには毒がある!
ゆっくり動くスローロリスは、それだけ自分が狙われる確率も上がってしまいます。
基本的にスローロリスの一番の防御方法は、回りの色に体の色を溶け込ませる擬態です。
しかし、それだけでは完全に身を守れません。
そこで、スローロリスが身に付けたのが毒です。
ロリス科のサルは脇の汗腺から臭いのある物質を出すことができます。
スローロリスはその物質に唾液を混ぜ合わせることで、さらに臭いが強烈になる毒を合成することができるんです。
この毒は酸性の強い刺激臭を発します。
なめるのはもちろんNGですし、臭いを嗅ぐだけで、外敵はスローロリスに手を出さなくなります。
また、寄生虫に対しても効果的です。
哺乳類で毒を持つのは世界にも数種類しかいません。サルの仲間ではスローロリスのみです。
この毒をスローロリスはグルーミングによって全身に塗りたくります。
また、子どもにも塗ることで、毒を分け与えています。
ちなみにスローロリスはこの毒に対して耐性を持っているため、口にしても問題ありません。
当たり前ですが。
スローロリス以外で毒を持つ哺乳類にはカモノハシがいます。
毒の成分は?強い毒なの?
スローロリスの毒に関しては、現在も分かっていないことが多いようです。
研究が進められている段階です。
人間にも被害が出ているらしく死亡例もあります。
ただ、毒による害と言うよりはアレルギー反応によるアナフィラキシーショックの可能性が高いそうです。
食中毒を起こすような毒ではないということですね。
スローロリスの天敵はオランウータン?
毒を持つスローロリスは基本的に捕食されることは少ないです。
しかし、世界最大のヘビ、アミメニシキヘビがスローロリスを捕食することがあるようです。
また、カワリクマタカという大型の猛禽類も、空中から狙ってきます。
さらにはオランウータンまでもがスローロリスを捕食することがあるようです。
ボルネオオランウータンがスローロリスを捕食することが知られています。
やはり完璧に防御することは難しいようですね。
野生の世界は厳しいです。
スローロリスと人間
スローロリスはペットとして人気がある一方、捕獲によって数を減らしている動物です。
かなり神経質な動物なため、1匹捕らえるだけでは死んでしまう可能性があります。
そのため、1回で数匹が捕らえられます。
また、飼い主を傷つけないように、歯を抜いてしまうことがあります。
劣悪な環境で飼育されると、抜かれた歯ぐきが感染症を起こしてしまう場合もあり、高確率で死亡します。
肉や毛皮、内蔵などを伝統的な医療に使用することもあり、非合法で密猟されています。
作物を荒らす害獣として駆除されることもしばしばです。
絶滅危惧種にも指定されていて、取引には規約が制定されています。
飼育する場合は正規ルートで取引された個体かどうかを確認しましょう。
違法なルートの場合は罰則のリスクもあります。
スローロリス以外にテナガザルの仲間も、薬の材料になるとして乱獲されています。
霊長類は世界的に数を減らしているんです。
まとめ
スローロリスは東南アジアに生息しているサルの仲間です。
愛くるしい表情にゆっくり動くその姿は、見るものを癒してくれますね。
意外にも肉食で、遅さを極めた狩りによって、昆虫や小鳥なども食べてしまいます。
かわいい顔してハンターなんですね。
遅さを補うように毒を身に付けています。
刺激臭のある毒によって、天敵を寄せ付けません。
意外なことばかりのスローロリスでしたが、可愛いことには変わりないですね。
絶滅も心配されているため、保護活動を応援したいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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