ナガレタゴガエルは今から40年ほど前に発見されました。
場所は何と東京です。
東京でも豊かな自然が残っている「奥多摩」の清流で発見されました。
ナガレタゴガエルは発達した足を持つため、水中での生活に適応していると考えられています。
近縁のタゴガエルに比べても、足の形状が全然違います。
カエルは産卵する時に「抱接(ほうせつ)」という、オスがメスに抱き着く行動をします。
しかし、ナガレタゴガエルはカエル以外、ヤマメなどの魚にも抱きついちゃうんです。
一体なぜ、魚にまで抱きつくんでしょうか?
清流のアグレッシブなカエル「ナガレタゴガエル」に迫ってみましょう。
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ナガレタゴガエルってどんなカエル?
ナガレタゴガエルはアカガエル科・アカガエル属の両生類です。
40年ほど前に発見されたという、最近まで存在が知られていなかったカエルです。
学名「rana sakuraii」は、「桜井氏のアカガエル」という意味で、ナガレタゴガエルの発見者である「桜井淳史」にちなんでいます。
英名は「Stream Brown Frog」といいます。
ナガレタゴガエルの特徴
大人のオスの体長は38~56mmで、平均は45mmです。大人のメスは43~60mmで。平均は53mmです。
オスよりメスの方が大きくなります。
オスもメスも見た目は同じで、赤っぽかったり、黄土色だったりします。
鼓膜は目立ちませんが、顔の側面に黒いラインが入ります。
タゴガエルとナガレタゴガエルの違い
ナガレタゴガエルと近い種類のカエルに「タゴガエル」がいます。
見分け方としては、ナガレタゴガエルの後ろ足の水かきがタゴガエルのものより発達していることがあげられます。
指先まで水かきが広がっているんです。
この水かきのおかげで、流れの早い渓流でも巧みに泳ぐことができます。
また、ナガレタゴガエルは繁殖期になると、皮膚がぶよぶよになるという特徴を持っています。
これも、タゴガエルと見分けるポイントです。
他にも鳴のうという、カエルが膨らませて鳴き声を上げる部分が無い、オスの親指のタコが2つに分かれていないところなどでも区別できますが、後ろ足の水かきが1番見分けやすいポイントです。
ナガレタゴガエルの分布
ナガレタゴガエルは日本の固有種です。
中国地方から関東地方の渓流周辺の山の斜面の森林に生息しています。
基本的には標高1000mまでの山で暮らしています。
東京でも奥多摩まで行けば見ることができます。
奥多摩は都心から最も近い自然豊かなスポットで、東京なのにツキノワグマやニホンザル、クマタカなんかも見ることができます。
ナガレタゴガエルも、奥多摩の清流や森林地帯で暮らしています。
きれいな川がないと生きていけないんです。
日本の清流は豊かさの象徴です。
世界最大の両生類「オオサンショウウオ」も、こんなきれいな環境でしか生きていけません。
ナガレタゴガエルの生態
ナガレタゴガエルは普段、森の中で昆虫などを食べながら生活しています。
オスは秋になると渓流に集まります。
そして、岩の下に入り込んで冬を越します。
川の中で冬眠するんです。
ナガレタゴガエルの鳴き声
「ククククク、ククククク」という鳴き声を水中で出します。
陸上から聞き取るのは難しいようです。
ナガレタゴガエルの繁殖
繁殖期は2月~4月です。
日本の本州のカエルの中では最も早く繁殖期を迎えます。
寒い時期はまだヘビなどは冬眠中です。
より安全に繁殖するためにも、早く行動を開始することが大切なんですね。
岩の下で冬を越したオスは、川の流れに乗って繁殖場所の本流まで向かいます。
このときオスは鳴き声を上げ、メスに呼びかけます。
また、繁殖期のオスは皮膚がぶよぶよになります。
こうなることで、体の表面積が広くなり、より多くの酸素を体内に蓄えることができるというわけです。
カエルはオタマジャクシの頃はエラ呼吸ですが、大人になると肺呼吸です。
息継ぎの回数を極限まで減らし、水中でメスを見つけることに全力を捧げるんです!
無事、メスとカップルになれたら産卵です。
両生類は体外受精により繁殖します。
メスが産んだ卵に、オスが精子をかけるんです。
このとき卵にいち早く精子をかけるため、オスは「抱接(ほうせつ」」と呼ばれる行動を行います。
簡単に言うと、メスを抱きかかえて、メスの生殖器の近くに自分の生殖器をスタンバイするんです。
手のひらの特殊なタコが、しっかりメスをホールドします。
少しでも多くの卵子が受精するための行動ですね。
卵は流されないように岩の下に産み付けられます。いい場所には何組ものペアが産卵に訪れ、大量の卵が産み付けられることもあるようです。
1匹は一度に50~170個ほどの卵を産みます。
孵化したオタマジャクシは川底の砂利に潜り込みます。
流れを避けるようにし、エサは食べずに変体していきます。
しっかり大人と一緒の姿になったら森林に上陸して、昆虫やミミズなどを食べて成長していきます。
ナガレタゴガエルは魚に抱きつく!?
抱接を行うナガレタゴガエルですが、動くものにならなんにでも抱きつくという習性があります。
他のオスにも抱きつくことがありますが、その場合は鳴き声を上げて「俺はオスだよ~」って言ってあげるみたいです。
鳴き声が聞こえたらすぐに離します。
他にもヤマメなどの川魚やサンショウウオなどに抱接している姿が確認されています。
抱きかかえた感触がメスに似ているし、鳴き声を上げないため、ずーっと抱きついてしまうんです。
ハグの熱はすさまじく、魚ごと陸に上げても離さないんだとか、、、
子孫を残したいがために必死ですね。
ナガレタゴガエルはオスの割合が多く、誰よりも早くメスに抱きつかないと繁殖できません。
そのため動いているものが目に入ると、誰かれ構わずとりあえず飛び掛かるんです。
メスかどうかの確認はその後に行うみたいです。
ナガレタゴガエルと環境
ナガレタゴガエルはきれいな渓流がないと生きていけません。
それぞれの県が定めるレッドリストを見てみましょう。
「—」はその都道府県にナガレタゴガエルが生息していないことを表しています。
北海道 | — | |||
青森県 | — | |||
岩手県 | — | |||
宮城県 | — | |||
秋田県 | — | |||
山形県 | — | |||
福島県 | — | |||
茨城県 | — | |||
栃木県 | 要注目種*(2004) → 要注目種*(2011) | |||
群馬県 | 注目*(2002) → 情報不足*(2012) | |||
埼玉県 | 準絶滅危惧(2002) → 準絶滅危惧*(2008) | |||
千葉県 | — | |||
東京都(区部) | — | |||
東京都(北多摩) | — | |||
東京都(南多摩) | 絶滅危惧II類(2010) | |||
東京都(西多摩) | 準絶滅危惧(2010) | |||
神奈川県 | 希少種*(1995) → 希少種*(2006) | |||
新潟県 | -(2001) → 地域個体群(2016) | |||
富山県 | -(2002) → 絶滅危惧II類(2012) | |||
石川県 | 情報不足(2000) → 準絶滅危惧(2009) | |||
福井県 | -(2002) → 準絶滅危惧(2016) | |||
山梨県 | 地域個体群(2005) | |||
長野県 | 情報不足(2004) → 情報不足(2015) | |||
岐阜県 | 情報不足(2001) → 情報不足(2009) | |||
静岡県 | 情報不足(2004) | |||
愛知県 | 絶滅危惧IA類(2009) → 絶滅危惧IA類(2015) | |||
三重県 | 絶滅危惧II類(2005) → 準絶滅危惧(2014) | |||
滋賀県 | 希少種(2005) → 準絶滅危惧(2010) | |||
京都府 | -(2002) → 要注目(2013) | |||
大阪府 | — | |||
兵庫県 | 絶滅危惧II類(2003) | |||
奈良県 | 情報不足(2006) → 希少種(2016) | |||
和歌山県 | — | |||
鳥取県 | その他重要種(2002) → 準絶滅危惧(2012) | |||
島根県 | -(2004) → 情報不足(2014) | 2014改訂で新規確認 | ||
岡山県 | -(2003) → 絶滅危惧I類(2009) | |||
広島県 | — | |||
山口県 | ○ | |||
徳島県 | — | |||
香川県 | — | |||
愛媛県 | — | |||
高知県 | — | |||
福岡県 | — | |||
佐賀県 | — | |||
長崎県 | — | |||
熊本県 | — | |||
大分県 | — | |||
宮崎県 | — | |||
鹿児島県 | — | |||
沖縄県 | — |
中には「絶滅危惧種ⅠA類」という、近い将来絶滅する可能性のあるカテゴリーもあります。
開発の影響が懸念されています。
まとめ
ナガレタゴガエルは日本にしかいない固有種です。
最近まで発見されなかったのは、山の奥地でひっそりと暮らしていたからかもしれませんね。
魚に抱きつくのは他のカエルに見られないおもしろい特徴です!
子孫残すために必死なんですね。魚相手では絶対に残せませんが、、、
日本には清流が多くあります。
ナガレタゴガエルの生息地がまだまだ残っていけるようにきれいな環境を残していきたいですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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