絶滅しそうな動物といえばトラやサイ、ジャイアントパンダなどが有名ですよね。
しかし実は最も絶滅に近い哺乳類だと言われているのは「テナガザル」の仲間なんです。
テナガザルはその名の通り体に比べてものすごく長い両手を持っているサルの総称です。
「シロテテナガザル」や「フクロテナガザル」などが有名ですが、他にも何種類も存在しているんです。
テナガザルはなぜ絶滅しそうなのでしょうか?
もちろんそこには人間が深く関係しています。
熱帯雨林の仙人「テナガザル」と環境の関係についてお話しします。
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テナガザルの生息地はどこ?
テナガザルの仲間はインドの東側を最も西側としてミャンマー、バングラデシュ、マレー半島など、赤道に近い東南アジアの熱帯雨林に生息しています。ジャワ島やボルネオ島といった島国にも彼らの住処です。
最も北の地域は中国の南部ですが、過去にはそれよりも北の地域に存在していたことが過去の資料により分かっています。
テナガザルは樹上で生活者です。
地上に降りてくることはほとんどありません。
休憩や睡眠、ご飯を食べるのも全て木の上で器用に行います。
力強く長い腕と指を駆使し「枝渡り(ブラキエーション)」と呼ばれる方法で、ジャングルの中をまるでアスレチックを移動するみたいに自由自在に動き回ります。
テナガザルは絶滅危惧種!?
実は現在地球上で最も絶滅に近く、最も希少な哺乳類だと言われているのはテナガザルなんです。
特に、中国の南部に浮かぶ島、海南島の「カイナンテナガザル」は現在28頭ほどしか生息が確認されていません。
これは霊長類としてだけではなく、哺乳類全体でみてもトップクラスの少なさです。
テナガザルの仲間が数を激減させている理由は森林伐採や開発、密猟です。
東南アジアは現在森林伐採が進んでいます。
年間で計算すると、東京ドーム30万個以上の面積の森林が伐採されています。
毎日東京ドーム800個以上の森林が破壊されているということです。
紙の原料とするのはもちろん、焼き畑のペースもあがっています。
また天然ゴムの木やアブラヤシといった、お金になる木を植林することが国の政策としても進められています。
東南アジアにもとから生えていた原生林がどんどん減り、人工のプランテーションばかりが増え続ける、、、
さらにはダム建設や道路開設も進み、人口は溢れてしまう、、、
この悪循環が動物達を苦しめています。
テナガザルは雑食性でフルーツや葉っぱ、昆虫などを食べています。
ただ、草食性に近く、大好物はライチやランブータンなどのフルーツです。
低地の森林がプランテーションに変わってしまうと、食べ物を求めて高地の森林へ移動します。
しかし、高地の植物にはフルーツはほとんどならないんです。
葉っぱや昆虫ばかりを食べる日々が続くと、テナガザルにはストレスがかかるかもしれません。
生息地が狭くなるとテナガザルはどんどん孤立してしまいます。
繁殖ができなくなり、最終的には滅びてしまうんです。
そして、狩猟もテナガザルを減らす原因です。
テナガザルは昔から中国の医学で薬とされてきました。
テナガザルを丸ごと煮込んでペースト状にした薬は、滋養強壮に効果があると信じられていました。
高値で取引されることもあり、ハンターがこぞってテナガザルを仕留めたんです。
これほどまでに数が減ってしまっては、火災や洪水などの災害で一気に絶滅してしまう種類がいるかもしれません。
テナガザルが絶滅すれば、人間の手によって滅びてしまった、初めての霊長類ということになってしまいます。
現在必死に保護活動が進められています。
テナガザルの保護のために!
絶滅寸前まで追い込まれたテナガザルですが、彼らを守ろうと保護に力を入れている人々もいます。
現地住民に協力を依頼し、密猟者を監視するためのレンジャー部隊を結成することも、テナガザル保護に重要とされています。
現在では密猟者がほとんどいなくなるほどまでになっています。
さらに植林も進められています。
これまでに東南アジアの諸国では、東京ドーム2百万個分以上の面積の人工林が植えられてきました。
これでもまだまだペースは遅いんです。
国をあげての、さらなる植林が求められています。
そして、孤立してしまったテナガザルを別のグループと出会わせるための架け橋を作る計画も進められています。
森と森を繋ぐんです。
まだ計画段階だそうですが、これが実現すればテナガザルの生息数回復に大きな一歩となります。
テナガザルはわたしたち人間と同じ霊長類です。
祖先的な存在とも言えますよね。
どの種類も絶滅させるわけにはいかないんです。
テナガザルの赤ちゃんも生まれてる!
インドネシアの「Javan gibbon center」では、テナガザルの赤ちゃんが生まれています。
「Javan gibbon」は世界的にも生息数の少ないテナガザルで、トータル2000匹ほどしか確認されていません。
人工的な繁殖は初めてで、とても貴重な赤ちゃんだと言われています。
すくすく育ってくれれば、今後の研究にも大きな貢献となりそうです。
元気に生きていって欲しいですね。
また、絶滅寸前のカイナンテナガザルの保護活動を行っている研究者が、録音したテナガザルの声によって新しいグループを発見しています。
このグループのカイナンテナガザルには赤ちゃんも誕生していて、未来に希望が見えているようです。
赤ちゃんの誕生はとても嬉しいことですよね。
命が繋がっていくことは人間だけでなく、動物の世界でも奇跡のようなできごとなんです。
日本にいるテナガザルの種類を紹介
日本にもテナガザルを飼育している動物園があります。
テナガザルは東南アジアで19種類ほどの存在が確認されています。
その内、日本で飼育されているのは2種類です。
シロテテナガザル
・上野動物園(東京都)・福岡市動物園(福岡県)・金沢動物園(横浜市)・円山動物園(北海道札幌市)・旭山動物園(北海道旭川市)・釧路市動物園(北海道釧路市)・ときわ動物園(山口県)・京都市動物園(京都府)・王子動物園(兵庫県神戸市)
日本で最も多くの動物園が飼育している種類のテナガザルです。
中国の最も西南部からカンボジア、タイ、マレーシア、ベトナムなどの東南アジアに生息しています。
全体的に暗い色の毛で被われているのですが、茶色だったり赤っぽかったりと個体差がすごくあります。
顔は真っ黒でその回りを白っぽい明るい色の毛が縁取ります。
また、手足の先も白っぽい色なため、これが名前の由来ですね。
動物園でもかなりの人気者で、長時間見ていると結構面白い動きをしてくるんですよ。
わたしも上野動物園でひたすら見続けたことがあります。
そのときは綱渡りのような動きをしてくれて、ずっと笑っていました。
フクロテナガザル
・千葉市動物公園(千葉県)・東山動物園(愛知県名古屋市)・天王寺動物園(大阪府大阪市)・到津の森公園(福岡県北九州市)
最近テレビで取り上げられて人気に火がついたテナガザルです。
特徴的なのがセンター分けで毛先がカールした髪型です。
貴族みたいで面白いですよね。
そしてオスのフクロテナガザルはのど袋を持っていて、ここを膨らますことで爆音で鳴き声をあげられます。
名前の由来もこの袋ですね。
おっさんみたいな声として大人気です。
ちなみにフクロテナガザルはテナガザルの仲間では最も大きくなります。
迫力満点です。
テナガザルの鳴き声は歌声!?
テナガザルは明け方を中心に、鳴き声をあげます。
遠くまで響き渡るほどの大声で「歌(デュエット)」とも言われます。
この歌声は種類によっても違うため、研究者が種類を特定するときにも利用されるそうです。
歌声の理由は2つあります。
・縄張りを主張している!
・夫婦間のコミュニケーション
縄張りのアピールはそのままですね。
無駄な争いを避けるためにも、鳴き声で「入ってくるな!」と主張することは大切なんです。
縄張りアピールの鳴き声は「Great call(ゴレート・コール)」と呼ばれます。
そして夫婦間のコミュニケーションも大切なことですよね。人間でもそうです。
テナガザルはオスとメスがそれぞれパートを持って歌を歌うそうです。
まずメスが歌い出し、それに続いてオスが歌声をあげるとか。
テナガザルは「人間の次に声で複雑な会話をする動物」とも言われています。
人間が声で発展することができた進化の手掛かりとして、テナガザルのデュエットが研究されているほどです。
歌声はどの種類もとても美しいとされていますが、カイナンテナガザルは特に美しい歌声だとも言われています。
そのカイナンテナガザルが最も絶滅に近いということで、保護が進められているわけです。
まとめ
テナガザルは世界でも特に絶滅が心配されている動物です。
霊長類ということで、人間とも近い部分がありますよね。
だからというわけではありませんが、絶滅されるわけにはいきません!
森林伐採や開発、密猟などは完全に人間の勝手な都合です。
どうすることもできないと諦めるのは簡単ですが、少しだけでもテナガザルのことを考えてあげることもできるはずです。
小さなことから始めてみませんか?
歌声のコミュニケーションは野生の動物でもトップクラスに美しいとされています。
機会があれば動物園に見に行ってあげてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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