世界には不思議な動物がたくさんいます。
特に、オーストラリアは早くに分離した大陸なため、独自の生態系を作っています。
カモノハシはそんなオーストラリアの中でも、特に変わった特徴を持つ動物です。
卵を産むことが有名ですが、実は毒まで持っているんです。
今日は世界的にもトップクラスの珍獣、カモノハシについてのお話です。
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カモノハシの特徴
Foto by Wikimedia
カモノハシは哺乳綱・単孔目・カモノハシ科・カモノハシ属の動物です。
一科一属一種という珍しいタイプの動物ですね。
単孔目というのは尿道、肛門、生殖口が全て1つにまとまっているという総排出腔(そうはいしゅつこう)をもつ哺乳類のグループです。
単孔類にはカモノハシの他にハリモグラの仲間が属しています。
ちなみにカモノハシの学名は「Ornithorhynchus anatinus」
英名は「Platypus」といいます。
全長はオスの最大で60cmほど、メスは55cmほどとオスより小柄になります。
体重はだいたい1~3㎏ほどです。
寿命は最大で21年です。
全身が茶色の毛で覆われていて、お腹側の毛は白っぽい色をしています。
外側の毛には水をはじく機能があり、内側の毛には保温機能があります。
一番の特徴はカモのようなクチバシを持つことで、名前の由来にもなっています。
このクチバシはゴムのように弾力があります。
4本の足は短く、水掻きを備えているため、泳ぐことを中心に進化したのでしょう。
平たい尻尾でかじを取りながら自由に泳ぎ回ることができます。
潜水時間は動かなければ10分ほど、泳ぎ回る場合は1~2分ほどです。
陸上を歩くときは指を折り曲げるようにして地面につけます。
水掻きを保護していると考えられています。
その不思議な見た目から、最初にカモノハシの絵を見た動物博士は、架空の動物だと思ったそうです。
また、剥製を見たときはクチバシに繋ぎ目がないか疑うほどでした。
それほどまでにインパクトがあったんですね。
通常なら考えられないような姿をしていたんです。
カモノハシはオーストラリアの固有種
カモノハシはオーストラリアの東部やタスマニア島の限られた地域に生息しています。
熱帯雨林の奥深く、ジャングルの中で暮らしています。
水棲なため、水辺のほとりに巣を作ります。
巣は地面に穴を掘るタイプで、入り口は水中か土手にあります。水草で入り口を隠すこともあります。
早朝や夕方に活動が活発になる「薄明薄暮性」と呼ばれる行動スタイルで、それ以外は巣の中で休んでいるようです。
カモノハシの食性
カモノハシは肉食性です。
甲殻類、魚類、両生類、昆虫類、ミミズ、貝類などを食べています。
水中でエサを捕まえるのですが、泳ぐときは目を閉じた状態で獲物を探します。
この時に役に立つのがくちばしです。
動物が動くとき、筋肉ではわずかですが電気が発生します。これを「生体電流」と呼びます。
カモノハシのくちばしには、この生体電流を感じることができる神経が詰まっています。
そのため、目に頼らなくても難なく獲物を捕らえることができるんです。
長時間の潜水をする必要が無いほどスムーズに獲物を捕まえます。
また、カモノハシには歯がありません。
これは、電流を感じるための神経が歯の生える空間を占領したため、退化したからとされています。
ただし、くちばしの付け根には頑丈な固い皮膚「角質板」があるため、獲物を食べるのには苦労しません。
カモノハシには毒がある!?
カモノハシのオスには前足の付け根に蹴爪を持っています。
この蹴爪には毒があるんです。
危険が迫るとこの蹴爪を相手に刺して、毒を注入します。
この毒はカモノハシの免疫機能により作られるそうで、犬ほどの小動物なら死に至らしめることができます。
人間などの大型の動物でも刺されてしまうと激痛が走ります。
この痛みはモルヒネなどの鎮痛剤が効かないほどの威力で、数週間、ひどい場合には数か月間痛みが続くこともあります。
毒を持つ哺乳類は世界的にも数種類しかいないほど珍しく、毒針を持つ哺乳類はカモノハシのみです。
人間がカモノハシの毒によって死亡した事例はありませんが、その激痛はすさまじく、カモノハシに近付いたことを後悔するほどだそうです。
カモノハシは繁殖期に毒を生産する量が増えるため、8~10月までは特に注意されています。
ちなみにメスのカモノハシも蹴爪を持って生まれてきますが、成長と共に抜け落ちるそうです。
毒を持つ哺乳類には、東南アジアのスローロリスがいます。ただ、こちらは毒針ではなく、全身に塗りたくる、刺激臭を発生させるタイプの毒です。
カモノハシは卵を産む!?
人間は人の形をした赤ちゃんを産みますよね。これを胎生と言います。
哺乳類の多くは胎生です。
しかしカモノハシは非常に珍しく、卵を産む卵生です。
卵生の哺乳類は世界で見てもカモノハシとハリモグラの仲間のみです。
繁殖期の8~10月になると、メスは1~3個の卵を巣の中に産みます。卵の大きさは17mmほどで、弾力がありネバネバしています。
そしてしっぽで包むように抱卵することで、10~12日で卵が孵化します。
カモノハシの赤ちゃんは卵嘴(らんし)という卵を割るためのくちばしを持っていて、これを使って卵から出てきます。
孵化後は母親と一緒に生活し、4か月ほどで独立します。
ちなみにカモノハシには乳首がありません。お乳は乳腺からにじみ出てきます。
赤ちゃんはにじみ出てきて毛に染み込んだお乳をなめることで栄養を得ています。
卵を産むのに哺乳類なの?
哺乳類は胎生なのが一般的です。
卵で繁殖するのは鳥類、爬虫類、魚類、昆虫類などですよね。
普通に考えたら卵を産むカモノハシは哺乳類じゃないように感じますが、立派な哺乳類です。
哺乳という漢字を見てみましょう。これはお乳で子どもを育てるという意味です。
カモノハシは乳首こそありませんが、乳腺からにじみ出たお乳を子どもに与えて子育てします。
実は胎生か卵生かというのは、哺乳類かどうかを決定する決め手にはならないんです。
カモノハシも他の哺乳類と同じ先祖から分離した動物です。
体毛、横隔膜、心臓、血液、そして授乳という哺乳類特有の体の特徴を持っているんです。
カモノハシはどうして卵を産むの?
カモノハシが産卵によって繁殖する理由は、
カモノハシがより原始的な動物だからです。
哺乳類の祖先は爬虫類です。カモノハシが持つ総排出腔も爬虫類や鳥類の特徴です。
爬虫類が卵生なのは納得できますよね。
その爬虫類から私たちのような哺乳類になる前の状態がカモノハシなんです。
カモノハシが生息しているオーストラリアやタスマニア島は、早くに独立した大陸であるため、原始的な動物が多いです。
カンガルーをはじめとする有袋類も、胎盤を持つ我々「有胎盤類」の祖先です。
天敵のいなかったオーストラリア大陸では、カモノハシなどの原始的な動物が生き残るのに最適だったんです。
普通は、自分より優れている動物が表れることで進化したり、滅ぼされたりしますが、カモノハシにはその必要が無かったんですね。
オーストラリアという特別な環境が、哺乳類のルーツとも言えるカモノハシを守ってくれていたんですね。
カモノハシは日本の動物園にいない!
カモノハシはこれまで日本の動物園で飼育されたことがありません。
1996年に東京で開催される予定だった「世界都市博覧会」で展示される予定だったのですが、そもそもでオーストラリア政府からの許可が下りなかったみたいです。世界都市博覧会自体も中止になっています。
カモノハシは希少種なため、オーストラリア政府により大切に保護されています。
取引が行われることはまずないと思われるため、今後も日本に持ち込まれることは無いでしょう。
これほどまでに保護されているため、絶滅の危険性は低いと言えます。
オーストラリア東部のビクトリア州のヒールズビル自然保護区やクイーンズランド州のローンパインコアラ保護区ではカモノハシが飼育されています。
本物を見たければオーストラリアまで行くのが無難です。
まとめ
・カモノハシはオーストラリア東部やタスマニア島の限られた地域にのみ生息
・前足の蹴爪に毒がある
・哺乳類なのに卵生で、乳首も無い
・カモノハシが卵生なのは原始的な哺乳類だから
カモノハシは哺乳類のルーツとも言える存在です。
爬虫類から私たちのような哺乳類に進化した過程を表しているとも言えますね。
カモノハシによって、生き物の進化の謎が解明できつつあります。
本当に絶滅しなくてよかったですね。奇跡とも言えます。
ぜひ本物のカモノハシを見てみたいものです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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