ウサギの仲間

 

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 更新日:2022年6月25日

アマミノクロウサギが絶滅危惧種な原因とは?動物が裁判を起こした!?

「アマミノクロウサギ」は世界にも奄美大島と徳之島にのみ生息している、とても珍しいウサギの仲間です。
ウサギなのにぴょんぴょん跳ねることはなく、のっそのっそと歩きます。

天敵から我が子を守るため、とっても変わった子育ても行うことも分かっています。

そんなアマミノクロウサギは現在、絶滅危惧種に指定されています。
これには人間が深く関わっているとか、、、
開発や外来種がアマミノクロウサギを脅かしているんです。

アマミノクロウサギを守ろうと、住民や自然保護団体も動き出しました。
なんと、動物を原告に裁判を起こしたんです。

アマミノクロウサギとはどんなウサギなのでしょうか?
裁判の行方は?

日本が誇る珍獣「アマミノクロウサギ」に迫ります。

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アマミノクロウサギってどんなウサギ?

アマミノクロウサギ
学名Pentalagus furnessi
英名Amami rabbit
生息地奄美大島、徳之島
体長41~51㎝
体重1.3~2.7㎏

アマミノクロウサギはウサギ目・ウサギ科・アマミノクロウサギ属の哺乳類です。
アマミノクロウサギ属はこの種類のみです。

DNAや生態、特徴から見ても、かなり原始的なウサギの仲間だとされています。
もともと台湾辺りと地続きだった際にこの地方に住みつきましたが、海水面の上昇で孤立したと考えられています。
一般的なウサギの仲間、ノウサギが入る前に孤立したため、現在まで生き残ることができたんでしょう。

和名は「奄美の黒ウサギ」でそのままですね。
また、英名は「Amami rabbit(奄美のウサギ)」で、こちらもまたそのままの名前です。

 

アマミノクロウサギの生息地

アマミノクロウサギは鹿児島の南端の島「奄美大島」と「徳之島」にのみ生息している固有種です。

森林地帯の斜面に巣穴を掘って生活しています。
比較的高齢樹の多い地域に生息しているようです。

 

北海道にはエゾナキウサギがいます。
アマミノクロウサギと共に日本を代表する固有種です。

 

アマミノクロウサギの生息数

アマミノクロウサギは奄美大島に2000~4800匹
徳之島に200匹ほどが生息しています。

1990年代までは奄美大島には6000匹、徳之島には300匹が生息していたとされるため、年々生息数を減らしているのが分かります。

 

アマミノクロウサギの特徴

 

アマミノクロウサギの体長は41~51㎝ほどです。
しっぽは3㎝ほどと短く、体重は1.3~2.7㎏です。

全身に長く光沢のある体毛と、短くやわらかい体毛が密集してふさふさに生えています。
毛の色は黒っぽい褐色で、お腹側は灰色です。

一般的なウサギと違って、手足が短いのが特徴です。
特に後ろ足は跳ねるほどの長さがありません。
耳も短いため、ウサギの特徴は備えていないですね。
これは原始的なウサギの特徴で、アマミノクロウサギはウサギの進化を解明する手掛かりとして、学術的にも重要とされています。

四肢の爪が鋭く頑丈で、穴を掘るのに適しています。
硬い粘土質の土に穴を掘ることができます。
巣穴は長さ2mになることもあります。また、直径1.8mにもなる部屋もあるようです。

 

アマミノクロウサギの生態

アマミノクロウサギは夜行性で、昼間は巣穴で休んでいます。
基本的には単独で行動しますが、同じ巣穴を数匹が一緒に利用していた例はあるようです。

アマミノクロウサギはウサギの仲間では珍しく、頻繁に鳴き声をあげます。
「ピーピー」という声で、縄張りを主張しています。
後ろ足で地面を叩くのも縄張りの主張です。
親子や夫婦が音で位置を確認しているとも考えられています。

 

アマミノクロウサギの食べ物

 

アマミノクロウサギは草食性でススキなどの草、木の皮、果実やタケノコなどを食べ物としています。
飼育下ではサトウキビ、リンゴ、バナナ、大根などを食べたこともあります。

また、植林されたスギやヒノキ、農作物を食べてしまうこともあります。

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アマミノクロウサギの子育て

 

アマミノクロウサギは確認されている限りでは春と秋の2回、繁殖期を迎えます。
通常は1回の出産で1匹の赤ちゃんを出産しますが、まれに2匹産まれることもあります。

子育ては自分が住んでいる巣穴とは別の巣穴で行います。
2mほどの巣穴に赤ちゃんを入れ、毎晩お乳を飲ませにきます。

授乳が終わると赤ちゃんを穴に戻し、入り口を土で埋めてフタをしてしまいます。
この時、結構入念にフタを固めます。

穴にフタをすることで、天敵のハブから子どもを守ることができます。
また、子どもは体温が奪われると死んでしまう可能性があります。
フタは赤ちゃんが雨にぬれることも防いでくれます。

 

子どもは少ない数を確実に守った方が生き延びられる可能性も高くなります。
アマミノクロウサギは別の巣穴を作り、フタでしっかり守ることで、子どもが成長できる環境を作っているんです。
アマミノクロウサギのような原始的なウサギが生き残ってこれたのは、自分の赤ちゃんを大切に育てていたからなんですね。

 

アマミノクロウサギは絶滅危惧種!?

アマミノクロウサギは現在絶滅危惧種に指定されています。
レッドデータブックのカテゴリーは「絶滅危惧種ⅠB類」です。
今後、絶滅してしまう危険性があります。

1921年に国の天然記念物に指定され、1963年には特別天然記念物に指定されました。
さらに2004年、種の保存法により、国内希少野生生物に認定されています。

しかし、森林伐採や植林による生息地の減少、交通事故によって生息数は減少しています。
さらに、追い打ちをかけるかのように、人間が持ち込んだ外来種が、アマミノクロウサギを捕食してしまっているんです。
天敵のいない島だったから、短い足でゆっくり動いても、生活できていたんです。
動きの速い捕食者が現れればどうなるかは想像がつきますよね。

 

アマミノクロウサギとマングース

マングースは毒蛇「ハブ」を駆除する目的で、1910年に沖縄に持ち込まれました。
そして、1979年に奄美大島に沖縄で繁殖したマングースが導入されます。
導入時は30匹だったマングースはあっという間に1万匹以上にまで増えました。

しかし、実はマングースはハブを食べていませんでした。
昼行性のマングースに対して、ハブは夜行性です。
両者はほとんど出会っていなかったんです。

しかも、ハブに噛まれればマングースもただでは済みません。
そんな危険な動物を獲物とするよりは、もっと安全に仕留められる獲物を狙いますよね。

アマミノクロウサギはマングースにとって格好の餌食でした。
動きが遅いですからね。実際にマングースがアマミノクロウサギの巣穴に入ってしまっていることも確認されているんです。

沖縄本島でも、固有種のヤンバルクイナがマングースによって数を減らしてしまっていることが問題視されていました。

 

マングースは日本にしかいない固有種を減らしてしまっているんです。

状況を重く感じた鹿児島県と環境省は、2000年からマングースの駆除を始めます。
罠や訓練された犬を使ってマングースを駆除していき、現在はアマミノクロウサギの生息数が回復するまでに至っています。

でも、一番かわいそうなのはマングースですよね。
勝手に連れてこられたのに、駆除されることになって、、、
最初はヒーロー扱いされていたのに、いつの間にか悪役とされているんです。
人間の身勝手に付き合わされてしまったんですね。

 

アマミノクロウサギと野良犬、野良猫

人間が飼育していた犬や猫が野生化し、アマミノクロウサギを捕食していることも問題視されています。
こちらも駆除を行うなどで対策されています。

ネコが野生化して固有種を襲うことは多いですよね。
アマミノクロウサギは大丈夫ですが、ヤマネコなどがイエネコと交配してしまうこともあります。
種の保存のためにも、ペットは責任持って飼いたいものですね。

 

アマミノクロウサギ訴訟

1990年代、奄美大島には複数のゴルフ場が建設されていました。
これが原因でアマミノクロウサギなどの、島固有の動物たちの住処が奪われていたんです。
自然保護団体が反対活動を行っていましたが、なかなか止めることはできませんでした。

1995年にある企業が、ゴルフ場建設の森林開発の許可を鹿児島市に求め、これが許可されてしまいます。
何とか止めようと、自然保護団体は鹿児島県を相手に裁判を起こすことに決めます。

そして、原告となったのがアマミノクロウサギ、オオトラツグミ、アマミヤマシギ、ルリカケスなどの動物だったんです。
動物が裁判を起こす初めての事例となりました。

そもそもなぜ動物を原告にしたかというと、自然保護団体のメンバーが住んでいる地域が、ゴルフ場建設現場から離れていて、直接的な被害を受けていなかったからです。
法律では、開発によって土砂崩れなどの被害が発生する地域の人間しか裁判を起こせないことになっているんです。

そこで、苦肉の策として動物たちを原告としました。

しかし、裁判所側はこれを却下しました。
裁判を起こせるのは人間や法人(会社)に限られていたからです。

しかし、このことがマスコミに取り上げられ世間の注目を浴びます。
結果としてゴルフ場の建設は中止になったんです。

自然保護団体は、ここまで計算したうえで、動物たちを原告とした裁判を行ったんです。
彼らのおかげで救われた動物たちはどれだけいたでしょうか。
小さな島の生き物ですが、他にはいない希少な動物たちです。
命が未来に繋がっているんですね。

ちなみにアメリカでは、動物を原告とした裁判「自然の権利訴訟」が認められています。
日本でもこのような訴訟が認められる日が来るかもしれません。

それだけこの「アマミノクロウサギ訴訟」は日本中に衝撃を与えました。

 

まとめ

アマミノクロウサギは原始的なウサギの特徴を持っています。
世界中探しても奄美大島と徳之島にしかいません。

天敵のほとんどいない環境だったから、生き残ることができたんですね。
赤ちゃんを埋めるという、最低限の防御で種を残せていたんです。

しかし、マングースや野良猫などの影響で数を激減させてしまいました。
駆除される動物もかわいそうですよね。
人間が犯してしまった過ちで、どれほどの生き物が駆除されてきたんでしょうか。

アマミノクロウサギは絶滅の危険性があります。
この「日本が誇る珍獣」を守っていきたいですね。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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