ナマケグマって知っていますか?
別に怠けているからこんな名前が付けられたわけじゃないんですよ。
ナマケグマはインドやバングラデシュに生息しているクマです。
長く曲がった爪を持っています。
この爪で木にぶら下がることができ、その姿がナマケモノに見えるため「Sloth bear(ナマケグマ)」と呼ばれているんです。
ナマケグマは名前に似合わず人を襲うこともある危険生物です。
さらに、トラと戦うこともあるんです。
ナマケグマはどんなクマなんでしょうか?
ゆるい名前を付けられた強いクマ「ナマケグマ」を紹介します。
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ナマケグマってどんなクマ?
ナマケグマ | |
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学名 | Melursus ursinus |
英名 | Sloth bear |
生息地 | インド、ブータン、ネパール、バングラデシュ |
体長 | 140~190㎝ |
体重 | 90~145㎏ |
ナマケグマは食肉目・クマ科・ナマケグマ属の哺乳類です。
ナマケグマ属はこの種類のみです。
世界中に存在している8種類のクマの内の1つです。
胸の模様からツキノワグマを想像しますが、ナマケグマはより原始的なクマだと考えられています。
ナマケグマの名前の由来は「ナマケモノ」!?
ナマケグマは英語で「Sloth bear」といいます。
「Sloth」とは「ナマケモノ」のことです。
大英博物館が最初にこの動物のことを聞いたとき「Bear sloth」と名付けました。
ナマケグマのゆっくりした動き、木登りが得意なこと、爪で木にぶら下がれること、夜行性なため昼間は寝ていることにナマケモノとの共通点を感じたんです。
その後、実物がパリに送られてきて、クマだということが分かりました。
名前はひっくり返されて「Sloth bear」となりました。
ナマケグマの生息地はどこ?
ナマケグマはインド、ネパール、バングラデシュ、ブータンに分布しています。
草原、低木林、常緑植物の森林などに生息しています。
ナマケグマの特徴を見てみよう!
ナマケグマは体長140~190㎝、体重はオスが90~145㎏、メスは55~100㎏ほどです。
オスの平均的な大きさは、体調160㎝、体重120㎏ほどです。ツキノワグマよりかは少し大きいようです。
ナマケグマは全身の体毛が長いため、大きく見えますが、意外にも体重は軽いようです。
ちなみにクマの仲間で最大なのはホッキョクグマです。
最大で体長3m、体重は500㎏にもなります。
ナマケグマは基本的には黒っぽい体色をしていますが、灰色や赤っぽい個体なども存在しています。
胸の部分には月型の模様が入ります。
模様は、白かったり黄色かったりと、こちらにも個性が表れているんですね。
前足の爪は7~10㎝にもなり、アリの巣を破壊したり木登りに適しています。
また、外敵や人間と戦う際には武器にもなります。
ナマケグマの食べものは何?
ナマケグマは夜行性です。
昼間は休んでいますが、夜になると食べ物を探しに出かけます。
基本的には雑食性ですが、主食は白アリです。
長い爪で白アリの巣を破壊します。
ナマケグマはおもしろいことに、息を使ってシロアリを食べています。
口をすぼめてシロアリの群れに息を吹きかけ、ゴミを飛ばしてからシロアリのみを食べます。
上あごの前歯が無いため、このような芸当ができているようです。
他にも、ハチミツ、昆虫、鳥の卵、花、果実、動物の死骸などを食べています。
昆虫以外の動物を襲うことはほとんどありません。
簡単に食べることができる食べ物を選んでいるようですね。
ナマケグマは子育てで子どもをおんぶする!
ナマケグマの妊娠期間は6~7日間です。
妊娠期間が終わると、地中の巣穴で出産します。
1回の出産で1~3頭(通常2頭)の赤ちゃんを産みます。
生後3ヶ月まで、母親と子どもは巣穴に引きこもります。
その後は1年6ヶ月~3年間母と子で行動します。
この時に、子どもは母親の背中に乗って移動します。
ナマケグマの体毛が長いのは、子どもが掴む時に安定するためだとも言われています。
子育て中に目の前にトラなどの大型肉食動物が現れると、身を呈して子どもを守ります。
ナマケグマの寿命はどれくらい?
ナマケグマの寿命は約30年です。
ただ、野生では天敵の存在もあり、寿命まで生きられるものは意外に多くはありません。
ナマケグマの天敵は人間!?
ナマケグマの一番の天敵は人間でしょう。
胆のうが薬になると古くから信じられていて、密猟が後を絶ちません。
また、オスの膀胱は媚薬に、骨、歯、爪は魔除けになると信じられています。
さらにサーカスの一員としてナマケグマの子どもが狙われることもあります。
罠にはまった子グマを連れ去り、母親は殺してしまうこともしばしば。
狩猟だけでなく、最近はナマケグマの生息地が農地開発されていることも問題です。
エサを求めて農園に侵入したナマケグマを、駆除する人が増えてるんです。
生息地を破壊しているのは人間なのに、困ってしまったナマケグマを駆除しているんです。ナマケグマからしたら迷惑しかないですね。
ナマケグマとトラはどっちが強い?
ナマケグマの生息地域にはトラの一種「ベンガルトラ」が生息しています。
ベンガルトラは最大で体長2m近くになる、大型のネコ科動物です。
彼らはナマケグマの子どもを襲うことがあります。
そんな時、ナマケグマの母親が必死に戦ってトラを追い払う場面も観察されています。
また、逆にトラが仕留めた獲物をナマケグマが横取りすることもあるようです。
木登りが得意なナマケグマは樹上から急に現れるため、不意打ちをくらったトラがびっくりして獲物から離れてしまうんです。
トラはヒグマを襲うこともある大型肉食動物です。
そんなトラを追い払うということは、クマ界最強はナマケグマかもしれませんね。
ナマケグマは絶滅危惧種!?
現在ナマケグマは絶滅危惧種に指定されています。
レッドデータブックのカテゴリーは「絶滅危惧種Ⅱ類(VU)」です。
近い将来絶滅する危険性があります。
理由は先ほど説明した、農地開発や密猟です。
ワシントン条約にも指定されているため、取引にはそれぞれの国の許可が必要です。
それでも密猟が後を絶ちません。
農家による駆除も頻繁に行われているため、密猟と合わさって、ナマケグマは生息数を激減させています。
保護を強化しないと、取り返しのつかないことになりますね。
ナマケグマは原始的な特徴を持ったクマです。
生物学的にもかなり価値のある動物なので、絶滅させるわけにはいきません。
守っていきたいですね。
ナマケグマの性格は?人間を襲う事件は発生してる?
ナマケグマは狩りを行わないため、温厚な性格に感じますよね。
しかし、意外にも凶暴なんです。
農園に現れたナマケグマが人を襲い、過去には600人以上が殺されてしまっています。
巨体なうえに長い爪も持っているため、襲われてしまえばひとたまりもないですよね。
ただし、農地開発によって食べ物に困ったナマケグマがエサを求めて農園に侵入してしまい、駆除しようとしてきた人間を襲った可能性もあります。
通常ならナマケグマが人間のテリトリーに入ってくることはあまりないんです。
ナマケグマも生きるために必死なんですね。
地域によっては里に下りてきたナマケグマが人に懐き、ペットにできたこともあるようです。
ナマケグマは日本にいる?
残念ながら、現在ナマケグマを飼育している動物園は日本にはありません。
2015年に北海道の円山動物園で飼育されていたメスの「ゴマキ」が亡くなりました。
ゴマキは30歳だったということで、ナマケグマの寿命に達していたんですね。
ゴマキは1984年12月に静岡県日本平動物園生まれです。
2001年から円山動物園で飼育されてきたということで、多くの人に愛されたはずです。
円山動物園が、国内唯一のナマケグマ飼育動物園だったので、ナマケグマを飼育している施設は無くなりました。
まとめ
・ナマケグマはナマケモノのように気にぶら下がれるのが名前の由来
・爪は7㎝にもなり、鋭い
・主食はシロアリで、唇をストローのようにしてアリだけを吸い込むことができる
・昆虫意外の動物を襲うことはない
・子育て中は子どもが母親の背中にしがみつく
・大道芸用に捕獲されることもあり、生息数が減っている
・胆のうを薬にするために密猟されている
・農地開発や駆除によって絶滅の危機が!
・日本の動物園では、円山動物園で飼育していたが、現在は1頭も飼育されていません。
ナマケグマと聞くと、ダラダラしてそうな名前ですが、最強の宿敵「ベンガルトラ」と渡り合うほど強かったんですね。
絶滅の危機も心配されています。
保護が進むことを祈るばかりですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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