フクロオオカミはオーストラリア全体に生息していた有袋類の仲間です。
タスマニアタイガーの異名を持ちます。
現在、地球上でその存在を確認することはできておらず、絶滅したとされています。
野生にも動物園などの施設にもいない、完全に絶滅してしまった動物です。
フクロオオカミはカンガルーやコアラなどと同じ「有袋類」でありながら、見た目や生態がオオカミのようなとても珍しい動物でした。
フクロオオカミはどのような動物だったのでしょうか?
どうして絶滅しなければならなかったのでしょうか?
また、生存の可能性はないのでしょうか?
幻の動物「フクロオオカミ」についてまとめます。
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フクロオオカミ(タスマニアタイガー)とは?
フクロオオカミはフクロネコ目・フクロオオカミ科・フクロオオカミ属の哺乳類です。
フクロネコ目はフクロネコやフクロアリクイ、タスマニアデビルなど、有袋類の中でも肉食性で、捕食者の位置にいるグループです。
ちなみに有袋類の中でカンガルーやコアラなどの草食性、または雑食性のグループは「双前歯目」に分類されます。
フクロオオカミはオオカミじゃない?
名前にオオカミやタイガーと入っているフクロオオカミ(タスマニアタイガー)ですが、実はオオカミでもトラでもないんです。
タイガーと名付けられたのは単に体に入ったシマシマ模様が由来ですので、トラじゃないのは分かります。
トラどころか、オオカミや他のイヌ科の動物とも、フクロオオカミは遺伝的な繋がりがないんです。
見た目は完全にオオカミですよね!
さらに、骨格や鋭い牙、つま先立ちで歩く「趾行(しこう)」なども一致しています。
このような進化のことを「収斂進化(しゅうれんしんか)」といいます。野生の世界では結構起こることなんです。
収斂進化とは「遺伝的な繋がりの全くない、別の動物同士の体の特徴が似ること」です。
例えば、同じフクロネコ目のフクロアリクイと、アマゾンにいるアリクイはアリを食べることや長いベロという同じ特徴を持っています。
この両者も遺伝的な繋がりはないんです。
他にも哺乳類のモグラと昆虫類のオケラの、腕の造りが似ていることも収斂進化の1つです。
それぞれ地面を掘るための腕に進化しています。
すごいですよね!
同じような環境で、同じような生活をすることで、別の生き物の体の特徴が似ていくんです。
オーストラリアは大陸から早くに分離したため、有袋類という原始的な動物が生き残ることができました。
その中で肉食性の捕食者が、オオカミのような体の特徴を身につけたわけです。
それがフクロオオカミということです。
フクロオオカミの特徴
フクロオオカミは体長100~130cmで、体重は30kgほどだったと言われています。
ただ、詳しい大きさは分かっていません。
オーストラリアに現在生息しているイヌ科「ディンゴ」とほぼ同じ体格をしていたとされるため、大型犬くらいの大きさだったと考えられます。
体の色はきつね色で、背中からおしりにかけてシマシマ模様が入っています。
これがタスマニアタイガーの由来ですね。
フクロオオカミの生態
フクロオオカミは単独、またはペアで行動していたとされています。
夜行性で昼間は岩や木陰で休憩し、夕暮れから活動を始めていました。
フクロオオカミの食性
フクロオオカミは肉食性です。
狩りは単独で行い、主にワラビーなどの小型哺乳類を捕食していました。
また、人間が現れてからは家畜も襲うようになっています。
フクロオオカミの繁殖
フクロオオカミはカンガルーやコアラと同じ有袋類です。
お腹に袋を持っていたんです。
産まれた子どもは、ある程度大きくなるまでは袋の中で育っていたと考えられています。
ただ、きちんと飼育されたこともなく絶滅してしまいました。子育て方法や授乳期間などの詳細は分かっていないんです。
フクロオオカミは絶滅してしまった!
フクロオオカミは1930年に唯一の生き残りと思われる個体が射殺されましたが、1933年に生き残りが発見され、飼育されました。
しかしその個体も1936年に死亡しています。
絶滅の定義は「50年間目撃されていない」とされています。
1980年代になってもフクロオオカミは見つからなかったため、完全絶滅とされました。
なぜフクロオオカミは絶滅しなければならなかったのでしょうか?
やはりこれには人間が深く関係していました。
フクロオオカミとディンゴ
フクロオオカミの絶滅の大きな要因の1つがディンゴとの関係です。
ディンゴはもともとは人間が持ち込んだ飼い犬が野生化した野犬です。
人間がオーストラリア大陸に入ったとされる3万年前にオーストラリア大陸に住み着きました。
つまり外来種ということですね。
フクロオオカミが単独で行動していたのに対し、ディンゴは群れで行動し、狩りも集団で行います。
オオカミとしての習性を持っていたディンゴは、住処が変わっても、群れで行動していたんです。
フクロオオカミは、ディンゴが来るまでは単独で行動しても獲物にありつけていましたが、ディンゴが現れてからは獲物が減ってしまいました。
またディンゴとのバトルも、圧倒的な数の違いで負けてしまったんです。
結果として、フクロオオカミはディンゴとの生存競争に破れてしまいました。
実際にディンゴが生息していないタスマニア島でだけ、フクロオオカミは生き残れていたんです。
そのことからも、フクロオオカミが絶滅した1番の原因がディンゴにあったことは間違いないですね。
人間に駆除されてしまった
タスマニア島で生き残ることができたフクロオオカミでしたが、ここでは人間による迫害を受けてしまいます。
フクロオオカミがヒツジなどの家畜を襲うことを目の敵にした人間は、懸賞金もかけるほど、徹底して駆除しました。
懸賞金は1888年~1909年までかけられ、その間に2000頭以上ものフクロオオカミが殺されてしまいました。
結果としてタスマニア島に生き残っていたフクロオオカミも根絶やしにされてしまいました。
野生にも飼育下にも生息していない、完全絶滅という結果になってしまったんです。
フクロオオカミの絶滅は人間のせい
フクロオオカミは人間が持ち込んだディンゴと、人間そのものにより絶滅させられてしまったんです。
最後に残った1頭は、飼育されてから3年で死んでしまっています。
同じ種類の動物がこの世に自分だけというのはどんな気持ちだったのでしょうか。
さぞかしつらかったでしょうね。
フクロオオカミの生存の可能性は?目撃例も!
フクロオオカミの目撃例は現在でも結構あります。
しかしどれも信憑性に欠けるようです。
タスマニア大学の研究チームがタスマニア島の50ヶ所にカメラを仕掛けて、その姿を確認しようと試みていますが、現在まで撮影に成功したという情報はありません。
残念ながら、フクロオオカミ生存の可能性は限りなくゼロに近いようです。
ただ、研究チームはまだあきらめておらず、生存の証拠を掴むことを目標にしているようです。
フクロオオカミのクローン!?
現代の科学は発達していて、フクロオオカミの遺伝子を解析することで、クローンを作ることができるかもしれないようです。
ただ、状態の良い遺伝子を手に入れるためには、剥製や骨だけでは不十分なようで、これまではなかなかうまくいきませんでした。
そんな中エタノールに浸けられていた赤ちゃんの標本から、かなり保存状態の良い遺伝子が見つかりました。
この赤ちゃんは母親の袋の中に残っていたようで、奇跡とも言われています。
このまま研究が進めば、フクロオオカミがクローンとして甦る可能性があります。
ロマンを感じますね。
まとめ
・フクロオオカミはオオカミではなく有袋類の仲間
・フクロオオカミは1936年に絶滅したとされている
・大型犬くらいの大きさで単独で行動していた
・人間が持ち込んだディンゴにより滅ぼされた
・タスマニア島では人間の手により駆除された
・目撃例はあるが、確証はない
・クローンで甦るかも!
フクロオオカミは人間の手によって絶滅させられた代表例です。
そのため、甦らせることにも力を入れているみたいですね。
その絶滅の理由を聞くと、本当に悲しくなりますよね。
人類はこんな過ちを何回も繰り返しています。
クローンで甦ることに期待したいですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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