北欧やアラスカなどの寒い地域にはヒグマやオオカミなど、大型の肉食動物が多いですよね。
性格も獰猛なものが多いです。
しかし、これほどの猛者たちを差し置いて、最強と言われる動物がいるんです。
しかも、彼らよりも小柄です。
それが「クズリ」です。
クズリはイタチの仲間です。
サイズはそこまで大きくないのですが、恐れ知らずの凶暴さを持っています。
クズリは、その圧倒的凶暴さから、生息地ではヒグマやオオカミよりも恐れられている動物なんです。
イタチの仲間って凶暴な動物が多いですよね。
クズリとはどんな動物なんでしょうか?
名前の意味は?
北欧の最狂動物「クズリ」の生態に迫ってみましょう。
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クズリ(クロアナグマ)
クズリ(クロアナグマ) | |
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学名 | Gulo gulo |
英名 | Wolverine Glutton |
生息地 | ユーラシア大陸と北アメリカの亜寒帯から寒帯辺り |
体長 | 65~105㎝ |
体重 | 7~32㎏ |
クズリは食肉目・イタチ科・クズリ属の哺乳類です。
クズリ属の動物はクズリのみです。
ただし、生息地域が広いため「ユーラシアクズリ」と「アメリカクズリ」の2亜種に分かれています。
食肉目は別名ネコ目ともいいますが、現在はイヌ科やクマ科、イタチ科などが含まれるため、現在は食肉目が一般的です。
肉を主食とするグループですね。
クズリの名前の意味
クズリという名前は実は和名じゃないんです。
クズリの和名は「クロアナグマ」といいます。
実はクズリという名前は、樺太からアムール川周辺に住んでる先住民族「ニヴフ民族」の言語「ニヴフ語」が由来とされています。
漢字では「屈狸」と書きますが、これは当て字のようです。
また、アイヌの言葉ではクズリを「kuciri(クチリ)」と呼びます。
これは小便という意味で「クズリが木の上から小便をかけてきて、その小便を目に浴びると失明する」と恐れられているからだそうです。
クズリの英名は「Wolverine(ウルヴァリン)」といいます。
これはオオカミの意味の「wolf」が変化したものと考えられています。
「オオカミを狩る者」という意味が込められています。
ウルヴァリンと言えばマーブルの人気キャラですが、彼の凶暴な性格がクズリを思わせたため、このように名付けられたようです。
ちなみにもう1つの英名「Glutton」は「大食漢」という意味です。
クズリの生息地
クズリはアメリカ合衆国西部、カナダ、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、ロシア、中国北部、モンゴルなどに分布しています。
寒い地域に生息していて、気温が22℃を越える地域には姿を見せません。
針葉樹林や雪原地帯に単独で生息しています。
岩の割れ目、洞窟、木の穴や根本、他の動物の古巣などに草や葉を敷いて巣を作ります。
クズリの特徴
クズリは体長65~105cm、しっぽは17~26cmです。
体重は7~32kgですが、アラスカでの平均体重はオスが15kg、メスが10kgです。
タイリクオオカミの体長は100~160cm、体重は25~50kgなので、クズリはオオカミよりも小柄ですね。
もちろんクマに比べると遥かに小さいです。
クズリの体色は基本的に黒っぽい褐色です。
肩からおしりにかけての側面には、明るい色のラインが入ります。
寒さに適応するために分厚い毛皮と長くふさふさな体毛を持っています。
暗い色は森林で保護色の役割を果たします。
鋭い爪を持っていて、手足は短く頑丈です。
また、冬は足の裏に毛が生えるため滑りにくく、四肢の裏が幅広いため、雪道でも体を沈めずに動き回ることができます。
木登りを得意としていますし、泳ぐ姿も目撃されています。
鋭い牙と強靭なアゴの力を持ち、骨まで噛み砕くことができます。
クズリの食べ物
クズリは肉食性に近い雑食性です。
リスやウサギなどの小型哺乳類、鳥類やその卵などを獲物としています。
動物の死骸もあさります。また、果実を食べることもあります。
季節に応じて様々なものを食べています。
食べることに関しては執念深く、1日に45㎞を移動することもあります。
また、持久力が相当高く、10~15㎞なら休まずに走り続けることができます。
クズリはヘラジカを食べる
アラスカやロシアなどのクズリと同じ地域には、シカの仲間最大の「ヘラジカ」が生息しています。
ヘラジカは体長3m、体重800kgにもなる超大型の動物で、クズリよりも遥かに大きな体を持ちます。
しかし、クズリはこのヘラジカを襲って食べることがあります。
クズリは自分よりも大きな動物を襲うとき、特殊な方法で仕留めます。
木の上から相手の背中に飛び乗り、鋭い牙とアゴで脊椎や延髄といった急所を噛み砕くんです。
時にはクマであろうと、この方法で襲ってしまうことがあるんです。
しかも、雪駄のように幅の広い足の裏によって、雪の上でも足を取られることなく自由に動くことができます。
この足のおかげで、ヘラジカなどの大型動物が雪に足をとられている隙に襲うことが可能です。
周りの環境を活かした狩りを行うんですね。
無鉄砲に見えて意外に策士なんです。
クズリの性格
クズリはオオカミ、ヒグマ、ピューマなどが仕留めた獲物を奪うこともあるんです。
どの肉食動物もクズリより大きな体を持っていますし、オオカミにいたっては群れで行動しています。
通常、野生の動物はケガをするのを嫌います。
ケガをしてしまうと、狩りを行うことができなくなり、最悪の場合は死んでしまいます。
そなため、ケガをしそうな相手とは極力戦いません。
しかし、クズリはケガを全く恐れません。
オオカミだろうと、クマだろうと見境なく襲いかかります。
獲物を持っていれば尚更です。
これだけ牙むき出しで迫られたら、いくら自分の方が体が大きくても逃げるしかないですよね。
例え勝てたとしても無事ではすまないでしょう。
飼育下ではなんと、陸上最大の肉食動物であるホッキョクグマを殺傷したという記録もあるんです。
クズリとラーテル
イタチ科の仲間には凶暴な動物が多いです。
「世界一恐れ知らずの動物」としてギネスブックに登録されている、アフリカの「ラーテル」もクズリと同じイタチ科です。
ラーテルはライオンやハイエナにさえも食って掛かる、まさに怖いもの知らずの動物なんです。
クズリとラーテルは、自分よりも大きな体の動物でも、お構い無しに牙を向けます。
生息地が全く違うため出会うことはない両者ですが、戦ったらどっちが勝つんでしょうね。
ちょっとロマンを感じますね。
クズリは人間になつく?
これほど凶暴なクズリですが人間にはなつくのでしょうか?
基本的に野生のクズリは人間に心を開きません。
それどころかクズリのテリトリーに入れば、人間でさえも襲われます。
クズリに狙われてしまえば最後、脊椎噛み付き攻撃が待っています。
しかし、子どもの頃から飼い慣らしておけば、人間にもなつくことがあるようです。
上下関係をはっきりさせておけば、人間に牙を向けることはないんですね。
これは他の動物も一緒ですね。
クズリは絶滅しそう?
クズリはその凶暴な性格から、嫌われものとされています。
そのため、駆除されることがあるんです。
さらに、毛皮を目的とした乱獲も行われていて、生息数を減らしています。
また、地球温暖化のせいで、アメリカ地方のクズリは数を減らしています。
クズリが暑さに弱いのかどうかは詳しく分かっていませんが、長い毛を持つなど寒い地域に適応しているため、気温が上がると生きていけないのかもしれません。
レッドデータブックに「低懸念(LC)」として登録されていますが、生息密度が低いため、年々数を減らしています。
クズリの繁殖
クズリは一夫多妻で、冬が終わる4~8月に繁殖期を迎えます。
妊娠期間は30~50日で、通常は2~3頭、最大で5頭の赤ちゃんを産みます。
赤ちゃんは生まれたばかりの頃は真っ白ですが、1月ほどで親と同じ色になります。
生後3か月ほどで離乳し、5~7ヶ月には自分で獲物を捕り始めます。
生後1年で親と同じ大きさまで成長しますが、性成熟までには2~3年かかるため、この頃までは親と過ごします。
クズリの寿命
クズリの野生下での平均寿命は5~7年ほどです。
飼育下では最長で17年生きた例もあります。
まとめ
・クズリはイタチ科の仲間
・「クズリ」とは樺太の先住民族「ニヴフ民族」のニヴフ語が語源
・英名の「Wolverine」はオオカミを狩るものの意味
・幅の広い足の裏によって雪道でも足を取られない
・ヘラジカを仕留めることもある
・クマ、オオカミ、ピューマの獲物でさえも奪ってしまう
・子どもの頃から飼いならしておけば、人間にもなつく
・温暖化の影響で数を減らしている
クズリと言えば「ぼのぼの」に登場する「クズリくん」の印象が強かったのですが、あんなにゆるい生き物じゃなかったんですね。
むちゃくちゃ凶暴でした。
ラーテルやクズリは恐れ知らずなところがかっこいいですね。
体格差なんて、凶暴性を持ってすれば関係ないんです。
このタフさで絶滅の危機も乗り越えてほしいものです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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