世界三大珍獣の内の一種「ジャイアントパンダ」は、中国の限られた山奥で独自の進化を遂げてきた、まさに珍獣です。
独特の白黒模様、笹を食べる食性、1日の大半をダラダラ過ごしている生活などなど、ジャイアントパンダが珍獣と呼ばれる理由はたくさんあります。
2017年に上野動物園で赤ちゃんパンダ「香香(シャンシャン)」が産まれてから再び火が付いたパンダ熱は、朝早くから上野動物園に行列ができるほどすさまじいものでした。
しかし、野生のジャイアントパンダのことはあまり知られていませんよね。
生態や性格、寿命は?
なぜあんな独特の白黒のカラーリングになったのでしょうか?
今日は人気No.1のゆるかわ珍獣「ジャイアントパンダ」の知られざる秘密に迫ります。
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ジャイアントパンダはクマの仲間!
ジャイアントパンダ | |
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学名 | Ailuropoda melanoleuca |
英名 | Giant panda |
生息地 | 中国の四川省、甘粛省、陝西省の山岳地帯 |
体長 | 120~150㎝ |
体重 | オスの平均100㎏ メスの平均90㎏ |
レッドデータブック カテゴリー | 絶滅危惧種Ⅱ類 VU |
ジャイアントパンダの分類は食肉目・クマ科・ジャイアントパンダ属です。
食肉目とはその名の通り、肉を主食とする体の特徴を持ったグループで、ネコ科やイヌ科、イタチ科などが含まれます。
ジャイアントパンダは元々、手のひらの指の形や食べ物がレッサーパンダに似ていることから、レッサーパンダと同じグループの動物だと考えられていました。
レッサーパンダは現在「レッサーパンダ属」ですが、アライグマの仲間だとされていた時期があります。
そのため、ジャイアントパンダもアライグマと近縁だと思われていました。
しかしその後の研究で、ジャイアントパンダがクマの仲間と遺伝子的に近いことが判明し、クマ科とされるようになりました。
体の大きさや特徴もクマにしか見えませんよね。
カラーリングのせいで緊張感がない見た目になっていますが、、、
ジャイアントパンダの生息地はどこ?
ジャイアントパンダは中国にのみ生息している固有種です。
具体的な地域は四川省(しせんしょう)、甘粛省(かんしゅく)、陝西省(せんせい)の山岳地帯です。
標高1200~4100mの竹林に生息しています。
過去にはその他の地区にも生息していましたが、現在は絶滅しています。
ジャイアントパンダが白黒なのはどうして?
ジャイアントパンダの代名詞と言えば、白黒のカラーリングですよね。
目の周り、耳、手足は黒く、その他は白です。
特に目の周りの模様は少し垂れさがっていて、たれ目という独特のかわいらしさを感じさせてくれます。
これが最も人気のポイントでしょう。たくさんのキャラクターになるくらいです。
一体なぜ、ジャイアントパンダはこんな色になったのでしょうか?
かわいく見せるため?
もちろん違います!
ジャイアントパンダが白黒模様なのには、住んでいる地域が関係しているんです。
標高の高い中国の山岳地帯は、夏は緑が広がる森林ですが、冬には雪が降り積もります。
ジャイアントパンダは天敵のヒョウやトラから身を隠すため、森と雪両方の中で見えづらい体色になる必要があるんです。
その色こそが、あの独特の白黒模様というわけですね。
また、目の周りを黒くすることで、相手に威圧感を与えているという説もあります。
普通、クマの仲間はエサが少なくなる冬には冬眠するため、白くならなくてもいいんです。
しかしジャイアントパンダの主食は消化にあまり良くない笹です。
エネルギーも低く、冬眠できるだけの栄養を蓄えることができません。
そのため冬と夏、両方を乗り越えられる体の色に、進化していったと考えられているんです。
かなり不思議な見た目です。
本来は食べるはずのない笹を主食としているのも普通は考えられません。
この不思議さから、ジャイアントパンダは「世界三大珍獣」の1つとされています。
他の2種類は森の貴婦人「オカピ」と、最小のカバ「コビトカバ」ですね。
ジャイアントパンダが笹を食べる理由は?
ジャイアントパンダは食肉目です。
肉を食べるグループなため、腸が短いなど、肉食動物特有の体の特徴を持っています。
笹などの植物は、ジャイアントパンダの体に合っていないため「食べた量の20%ほどしか吸収できない」とも言われています。
ひたすら食べ続けてエネルギーを節約する、、、
ジャイアントパンダがほとんど動かずに笹を食べ続けるのには、ちゃんと理由があったんです。
ジャイアントパンダがこれほど効率の悪い笹を食べ続けるのは、笹しか食べられるものがなかったからなんです。
ジャイアントパンダが笹を中心に食べるようになったのは、
・トラなどの大型肉食動物との生存競争に敗れ、エサの少ない竹林に追いやられた
・氷河期の到来で食べるものがなくなり、1年中安定して食べられる笹を選ぶようになった
このどちらかだと考えられています。
どっちにしても、ジャイアントパンダが生き残るためには笹を食べるしかなかったんです。
笹のおかげで、現在もジャイアントパンダを見ることができるとも考えられますよね。
また、ジャイアントパンダはクマの仲間では唯一、物を掴むことができる手の造りに進化しています。
レッサーパンダも同じで、これが原因で両者は同じグループの動物だと思われていたくらいです。
親指横の骨が発達した「第6の指」と呼ばれる特殊な骨を持っていて、これが他の指と向かい合うことで物を掴めます。
さらに、ジャイアントパンダは小指の横の骨も変化しています。こちらは「第7の指」と呼ばれます。
第6の指と第7の指、両方を駆使することで器用に笹を掴むんです。
ちなみにジャイアントパンダも他のクマと同じように、雑食性な性質も持っています。
自然界では食べ物の99%が笹やタケノコなどの植物ですが、まれに小型哺乳類や昆虫類、魚類などを捕まえて食べるようです。
飼育されているジャイアントパンダが肉を与えられることもあります。
食肉目のジャイアントパンダが、完全に草食性になるのは難しいようです。
たまにでも肉類を食べることで、生きるために必要な栄養素を補っているんです。
ジャイアントパンダはどんな性格?凶暴って本当?
ジャイアントパンダが意外に凶暴だという話を聞いたことがあるかもしれません。
クマ科のジャイアントパンダは、いざとなれば凶暴性を持つことがあります。
動物園で、お客さんを急に襲ってしまったこともあるんです。
ただしこれは本当に珍しいことで、基本的にジャイアントパンダは穏やかな性格です。
子どもの頃は好奇心旺盛で飼育員にじゃれついてくることもありますが、襲ってくることはありません。
例えば日本に生息しているツキノワグマやヒグマが動物園で飼育されていたとして、飼育員がその檻に入るようなことはありませんよね?
同じ空間に入ってしまえば、襲われてしまう可能性が高いはずです。
しかしジャイアントパンダ保護施設などの映像で、飼育員がパンダと同じ空間にいることってありますよね。
子どものパンダの場合が多いのですが、大人のパンダと同じ空間にいる映像もあります。
その事を考えると、ジャイアントパンダが人を襲うことは、基本的に無いと考えられますよね。
同じクマ科でも性格は全然違います。ジャイアントパンダは限りなく草食性に近くなることで、凶暴さを無くしていったのかもしれませんね。
もちろん、怒らせてしまったり、危害を加えてしまったら話は別です。
これはパンダに限ったことではないですよね。
ジャイアントパンダの寿命はどれくらい?
ジャイアントパンダの野生での寿命は長くて26年ほどです。
現在は天敵も少なく、平均寿命も延びているようです。
飼育下での寿命さらに延び、最長34年という記録もあります。
これは他のクマ科の仲間と同じくらいの寿命です。
ジャイアントパンダは絶滅危惧種!?
ジャイアントパンダの存在が最初にヨーロッパ人に知られたとき、すぐに毛皮目的の乱獲が行われました。1869年のことです。
20世紀に入る頃には、すでに絶滅寸前まで数を減らしてしまいました。
その後も密猟や他の動物の罠にかかってしまうなどして生息数を減らし続けます。
また、中国の経済成長と共に森林の開発が進みジャイアントパンダの生息地域が分断され、繁殖できないものが続出してしまいました。
ジャイアントパンダが主食としている竹は地下で繋がっていることが多く、何本も生えているように見える竹が実は1本だけという場合があります。
竹は60年~120年に一度、花を咲かせて枯れます。
繋がっている1本の竹が一斉に枯れてしまうんです。
ジャイアントパンダの生息地が分断されてしまうと、枯れた竹林から別の竹林に移動することができなくなり、飢え死にしてしまうかもしれません。
現在、保護区の設定や密猟者への厳罰(過去には死刑の時代もありましたが、現在は懲役20年です)など、ジャイアントパンダの保護に力が入れられています。
保護施設も増え、現在40ヶ所でジャイアントパンダの飼育が行われています。
さらに、分断してしまった竹林を結ぶ「緑の回廊(グリーンコリドー)」の設置計画も進められています。
1994年の調査での生息数は1200頭、2004年には1600頭、2015年には1800頭と、着々と数は増加しています。
それでも、レッドデータブックのカテゴリーは「絶滅危惧Ⅱ類」なため、保護の手を休めてしまうと絶滅してしまう可能性もあります。
人間が犯してしまった罪です。気を緩めるわけにはいきませんよね。
まとめ
ジャイアントパンダはその不思議な見た目と生態から、世界三大珍獣のひとつとされています。
独特なカラーリングには、雪と森、両方の環境に溶け込むためのカモフラージュの役割があったんです。
性格はとても穏やかです。
やんちゃな部分もありますが、人を襲うことは滅多にありません。
もちろん危害を加えられれば別です。
クマ科特有の力強さで、反撃してくることもあります。
意地悪しちゃだめってことですね。
一時は絶滅間近まで数を減らしていましたが、懸命な保護活動で現在は数を増やしつつあります。
まだ安心はできませんけどね。
こんな珍獣を絶滅させるわけにはいきませんよね。
みんなで守っていきましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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