水中をゆったり泳ぐマナティー。
その姿は時の流れを忘れてしまうほど、見ている者を穏やかな気持ちにさせてくれます。
私も初めてマナティーを見たときは「生まれ変わったらマナティーになりたい!」なんて思ってしまうほど、自由で優雅な姿に感動しました。
もしマナティーを生で見たことがないのであれば見る価値はありますよ!
悩みなんて吹っ飛んでしまうかもしれません。
日本でマナティーを見ることができる水族館を紹介します。
マナティーの生態も合わせて解説しますね。
今日は、水中で暮らす動物の中でもだんとつにゆるかわな「マナティー」に迫ってみます。
好きなところにジャンプできます
マナティー
マナティーはジュゴン目(海牛目)・マナティー科・マナティー属の哺乳類の総称です。
実は現存するマナティーは3種類います。
ジュゴン目にはマナティーの他にジュゴンがいます。
また、1760年代に絶滅したとされる「ステラーカイギュウ」もジュゴン目だったとされています。
マナティーの種類と生息地
現存するマナティー3種類を紹介します。
アメリカマナティー
アメリカ東部、キューバ、ドミニカ共和国、ジャマイカなどの河川の河口付近に生息し、海と河を行き来しています。
フロリダの沿岸に生息しているマナティーは「フロリダマナティー」として、亜種扱いされることもあります。
基本的には淡水で生活し、長い時間海水の中にはいられないようです。
体長は最大で390cm、体重は1500kgにもなる、現存のジュゴン目の中では最大です。
アマゾンマナティー
南米アマゾン川の淡水にのみ生息するマナティーです。
アンデス山脈ができたことで隔離されたと考えられています。
標高200m以下、水温は25℃~30℃を好むようです。
体長2.8m、体重は500kgと、マナティーの仲間では最小です。
アフリカマナティー
アフリカ大陸西部の沿岸や河口付近の汽水域に生息しています。
基本的には温暖な海域を好むようで、水温18℃以下の海域には入らないようです。
体長4.5m、体重は360kgで、スリムな体型をしています。
マナティーを飼育している水族館
現在マナティーが飼育されている水族館や施設は日本に4ヶ所あります。
しかも、全てに行くことができれば、マナティー全3種をコンプリートできるんです。
・鳥羽水族館(三重県鳥羽市)
・美ら海水族館(沖縄県名護市)
・新屋水族館(香川県高松市)
・熱川バナナワニ園(静岡県伊豆)
鳥羽水族館のマナティー
鳥羽水族館にはアフリカマナティーが2頭、ペアで飼育されています。
オスの「かなた」とメスの「みらい」です。
さらに鳥羽水族館では同じ海牛の仲間「ジュゴン」も飼育されています。
日本で唯一ジュゴンを飼育しているため、マナティーとジュゴン両方が見れるのは鳥羽水族館だけです。
沖縄美ら海水族館のマナティー
沖縄美ら海水族館ではアメリカマナティーが3頭飼育されています。
マナティーの展示施設は水族館内ではなく、おきちゃん劇場周辺のマナティー館です。
しかもマナティー館だけであれば無料で入ることができるんです。
ここではオスとメスのペア、さらにその子どもの家族で展示されています。
子どもは「ユマ」というメスです。
アメリカマナティー独特の大きな体は見ものです。
新屋島水族館のマナティー
香川県の新屋島水族館ではアメリカマナティーが2頭、ペアで飼育されています。
オスの「ベルゴ」とメスの「ニーナ」です。
新屋水族館では平日限定でマナティーにエサをあげる体験も開催しています。(参加費500円)
貴重な体験になりますね。
※マナティーの体調次第では時間帯変更やイベント自体が中止になることがあります。
事前に確認した方がよろしいでしょう。
熱川バナナワニ園のマナティー
伊豆の熱川バナナワニ園では、日本で唯一淡水生のアマゾンマナティーが1頭飼育されています。
オスの「じゅんと」といいます。
じゅんとはなんと50歳くらいだそうです。
マナティの寿命を考えると、もうすぐ見れなくなるかもしれません。悲しいですけど、、、
毎日午前10時30分と午後2時にエサあげ体験もあり、マナティーがご飯を食べている様子を近くで見ることができちゃいます。
マナティーの特徴
ではあらためてマナティーについて説明します。
マナティーは海牛目とも言われるグループです。
海の牛と言われるほどにずんぐりむっくりした体型です。
見た目通りたくさんの脂肪が詰まっていて、水温の変化やある程度の食料不足にも対応できます。
胸ビレはヒジが確認できるほど少し長く、尾ビレはうちわのように丸いのが特徴です。
骨の比重が重いため、意外と潜水するのにも適しています。酸素の消費が少ないため、長時間潜っていることもできます。
また、緊急時には心拍数を極限まで減らし、必要な器官にのみ酸素や血液を循環させることもできます。
のんびり海を漂っているように見えて、意外にもたくましい体の造りをしているんですね。
マナティーの生態
マナティーは基本的に単独で行動しますが、繁殖期にはオスがメスの周囲に集まったり、寒くなると固まって行動したりします。
あまり泳ぎ回りはせず、基本的にはぷかぷか浮いていることが多いです。
そのためか、背中にコケが生えることもしばしばです。
意外にも寒さに弱く、2010年のフロリダの大寒波では、何百頭ものマナティーが死んでしまいました。
太っちょに見えますが、水棲の哺乳類の中では脂肪が少ないんです。
暖かい水を求めて、発電所の排水口付近に集まってしまうこともあります。
マナティーの食性
マナティーは草食性です。
アマモなどの海草や水面に浮いている水草、水辺の陸生植物などを食べます。
飼育下ではレタスやニンジンなどの野菜も食べるようです。
食べる際に胸ビレで掴むこともあり、これがヒジの関節が残っている理由でもあります。
また、マナティーの歯は特殊な構造です。
鮫の歯みたいに歯がどんどん生え替わるんです。
彼らの主食である海草類はカロリーが低く、巨体を維持するためには1日に体重の10%、50kgもの量を食べないといけないんです。
そのためには1日の大半を食べることに費やさなくてはいけません。
海草類には砂も多く含まれていて、噛む度に歯がすり減ってしまいます。
そのため、奥歯がどんどん生え続けていて、前歯の位置に来ると抜け落ちます。
これを「多換歯性」といいます。この機能により、マナティーは貧しい食生活を乗りきっているんです。
マナティーの体毛
禿げているように見えますが、実はマナティーにも体毛が生えています。
体毛と言えるほど多くはありませんが、その分太い体毛が顔だけでも2000本、全身にもそれなりに生えています。
この体毛が感覚器官になっていて、海草の位置などを敏感に感じ取れます。
猫のヒゲと同じような役割なんですね。それが全身にあるんです。
マナティーの繁殖
マナティーは1年に1回、繁殖期を迎えます。
この時期にはオスが争う姿が見られます。
メス1頭に対して数十頭のオスが交尾をせまるんです。
温厚なマナティーも、種を残すためには必死になるんですね。
妊娠期間は1年ほど、子どもは1頭産みます。
生後6~10年で性成熟します。
ちなみにマナティーの寿命は50年ほどです。
ジュゴンとマナティーの違い
マナティーと同じ海牛目で、見た目もそっくりなのがジュゴンです。
生活スタイルもほとんど同じなため、外見では中々見分けるのが難しい両者ですが、はっきりとした違いがあるんです。
尾ビレの形
マナティーとジュゴンの一番の違いか尾ビレの形です。
マナティーが丸い尾ビレを持っているのに対し、ジュゴンの尾ビレはイルカのようです。
上の図の左側がジュゴン、右側がマナティーです。
「マナティーは丸い、ジュゴンは三角」と覚えましょう。
口の位置
ジュゴンとマナティは草食性という同じ食性ですが、ジュゴンは特定の海草を食べます。アマモのみを食べるのですが、これは海底に生えている海草です。
そのため口は下向きです。
一方のマナティーは水面に浮いている水草や海藻、水辺の陸生植物なども食べます。
口はジュゴンほど下向きにについていません。
この表情と寄り添っている子どもに癒されますね、、、
胸ビレの長さ
ジュゴンは海底を這うように泳ぎながら海草を食べます。
そのため、胸ビレは海底を歩くために使用します。
マナティーは胸ビレでエサとなる海草や水草を掴んで食べることができます。
そのため、関節がまだ残っているんです。
マナティーのほうがジュゴンよりも長い胸ビレを持っていますし、マナティーの胸ビレには爪が残っています。
マナティーの胸ビレはゾウの足に似ています。
マナティーと人間の関係
マナティーは生息地では食用とされてきました。現在も先住民族による狩りは認められています。
また、漁網に引っ掛かったり、船のスクリューにぶつかったりと、生息数は減少しています。
船のスクリューによる痛々しい傷跡
絶滅危惧種に指定されていて、法的に保護されていますが、密猟者は現在もいるようです。
フロリダでは1970年代にはわずか1000頭のみでした。
その後ボートの規制などの懸命な保護を行い、1996年には3000頭まで回復しています。
まとめ
マナティーはその穏やかでのんびりした性格から、ファンがたくさんいる動物です。
日本にも飼育している水族館があるのは嬉しいですね。
ジュゴンと似ていますが、ちゃんとした違いもあるんです。
それぞれの違いを探すのも楽しいですね。
絶滅の心配もあるマナティーですが、懸命な保護活動により生息数が回復しつつあります。
ステラーカイギュウのような絶滅だけは絶対に避けないといけませんね。
こらからもマナティーファンを続けていきます!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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