アメリカ大陸にいるクマと言えば、凶暴な危険生物でお馴染み「グリズリー」が有名ですね。
しかし現在、人間のテリトリーにまで侵入しているクマは「アメリカグマ」というクマなんです。
アメリカグマは「アメリカクロクマ」とも呼ばれるクマで、大きさでこそヒグマやホッキョクグマには及ばないものの、人間を襲うには充分の体格を持っています。
アメリカやカナダでは、キャンプ場や住宅街などのゴミを漁っているアメリカグマが、人間を襲ってしまうケースが増えています。
アメリカグマはなぜ人間のテリトリーに侵入するようになったのでしょうか?
生態や性格はどんな感じなのでしょうか?
アメリカの黒い巨大熊「アメリカグマ」に迫ってみましょう。
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アメリカグマ「アメリカクロクマ」はどんなクマ?
アメリカグマは別名「アメリカクロクマ」とも呼ばれます。
英名は「American black bear(アメリカの黒い熊)」で、和名と同じ意味ですね。
分類は食肉目・クマ科・クマ属で、ヒグマやホッキョクグマ、ツキノワグマと同じ属です。
アメリカグマの分布は?
アメリカグマはアメリカ合衆国、カナダ、メキシコといった、北アメリカ大陸に幅広く生息しています。
アメリカ大陸では最もよく知られているクマです。
アメリカグマは、アメリカ大陸に生息しているグリズリーなどのヒグマを避けるため、森林地帯を住処としています。
そのため、ヒグマが絶滅してしまったカリフォルニア地方やメキシコ地方の、山や湿地帯に姿を現すこともあります。
アメリカグマの大きさはどれくらい?
アメリカグマのオスの体長は140~200㎝、体重は90~270㎏です。メスは一回り小さく、体長が120~160㎝、体重は40~240㎏です。
ただ、地域によって大きさに個体差があります。
一番大きくなると言われているのがペンシルバニア州の個体で、体長は最大で2m以上、体重は260㎏を平気で越えます。
これは、ヒグマの中でも大型になるグリズリーとほとんど変わらないくらいです。
ワシントン州に生息している個体は小型なものが多いようで、平均体重は100㎏ほどです。
過去最大のアメリカグマと言われているのは、1976年にカナダで撃ち殺された個体です。
このアメリカグマは内臓を抜き取った後なのに、体重が409㎏もあったとされています。
全長は241㎝あったそうなので、肥満体型というわけではなく、単純に大型だったのでしょう。
内臓は体重の15~18%ほどの重さと考えられるので、抜き取る前の体重は470㎏にもなります。ホッキョクグマ並みです。
冬眠に入る前の11月に仕留められたそうなので、脂肪を蓄えていたのでしょう。
アメリカグマの特徴は?シロアメリカグマもいる!?
アメリカグマはアメリカクロクマと呼ばれるため、基本的には全身が黒い体毛で被われています。
ただし、これにも個体差があります。
アメリカグマの毛の色は5種類あると言われています。
黒、明るい茶色、暗い茶色、青、白です。
特にシロアメリカグマは「スピリットベア(精霊のクマ)」と呼ばれるほど珍しいとされています。
スピリットベアはアルビノというわけではなく、劣性遺伝子によって10分の1の確率で産まれます。
そのため、普通の黒いアメリカグマからスピリットベアが産まれることもあります。
他にも青いアメリカグマは「Glacier Bear」と呼ばれ、栗色のアメリカグマは「Cinnamon Bear」と呼ばれます。
いずれも突然変異で現れる亜種です。
このような突然変異で体の色が変わる、劣性遺伝子を持つ動物はクマ以外にもいます。
クロヒョウがその代表で、通常のヒョウの変異個体として生まれます。
アメリカグマの生態
アメリカグマは、基本的に単独で行動します。
決まった縄張りは持っておらず、広範囲を歩き回ります。
明け方に行動することが多いのですが、キャンプ場周辺のアメリカグマは夜行性に変化することがあります。
最もエサが食べられる時間帯に活動するんです。
アメリカグマは冬眠する!
毎年冬になるとアメリカグマは冬眠します。
そのため、冬眠に入る前に果実などをたくさん食べ、栄養を蓄えるんです。
巣穴は洞窟や地面に掘った穴です。
まれに木の上にある穴で冬眠することもあるようです。
冬眠に入る期間は気温に左右されるため、地域によってバラバラです。
アメリカグマの繁殖
アメリカグマは冬に巣穴で出産します。
子どもは2~3頭が産まれます。
授乳は冬眠期間中行われ、春に母親と一緒に巣穴から出てきます。
ちなみに、出産を迎えたメスグマは、冬眠期間が若干長くなるようです。
子どもは2年間ほど母親と一緒に暮らします。
生後2~9年で性成熟します。
アメリカグマの寿命はどれくらい?
アメリカグマの野生での平均寿命は20年ほどです。
飼育下ではもう少し長く、30年にも達するようです。
ただし、狩猟や事故、罠に引っかかってしまうことで寿命を全うできずに死んでしまう個体も多いようです。
平均10年も生きられていないと言われています。
アメリカグマの食べ物は何?
アメリカグマは雑食性です。
植物を好む傾向にあり、果実や草、木の根などを主食としています。
昆虫や小型哺乳類、動物の死骸、魚類などの動物も食べます。
地域によってはサボテンやクリなども食べているようです。
ビーバーのような小型哺乳類は獲物とされやすいでしょう。
しかし最近では、アメリカグマがキャンプ場や森林に近い民家に現れることが多くなっています。
お目当ては人間の残飯。つまりゴミ箱を漁っているんです。
人間に慣れてしまったアメリカグマは人を怖がらなくなり、場合によってはかなり危険です。
いたるところに「クマにエサを与えないでください」という看板が存在し、クマが人里に降りてこないように注意されています。
アメリカグマの性格!襲撃事件が増えている理由は?
最近、フロリダ州でアメリカグマに人が襲われる被害が増えています。
住宅街にまで進出していて、自宅のガレージで襲われてしまうこともあるんです。
クマに出会ったら「そのままゆっくり後ろに下がる」というのが、一番有効だと言われている対処方法です。
でも、こんな大きなクマが目の前に現れて、そんなに落ち着いて行動できますか?
ほとんどの人がダッシュしちゃうと思います。
クマなどの食肉目の動物は、動くものを追いかけて襲う習性があります。
そのため、背中を向けて逃げるのは、かえって逆効果なんです。
アメリカで襲われる人が多いのも、これが原因です。
アメリカグマが人間のテリトリーに増えている原因は、彼らがゴミ箱を漁ることが増えているためです。
しかし、その背景には人口が増えていることがあります。
人口密度が増えてしまうと、それだけクマの生息域である森林を開発して家を建てる必要があります。
そうなると、クマに遭遇してしまう確率も上がります。
さらに、春先のエサが不足している時期に、生ゴミを漁ることで、効率の良いエサ場を覚えてしまうということも問題視されています。
本当ならエサの少ない時期でも人里に降りてくれば、栄養たっぷりのごはんにありつけるんです。
エサの少ない森か、エサがたっぷりの住宅街やキャンプ場、どっちを選ぶかは分かりますよね。
しかも、エサを与える人もいるようです。
アメリカグマは臆病な性格をしていますが、人間に慣れてしまうと危害を加えてくる恐れがあります。
人間が怖くないと学習してしまうんですね。
これはニホンツキノワグマでも言えることです。
人を襲ったアメリカグマは射殺されてしまいます。
今後も襲う可能性があるからです。
人も危険ですし、クマも殺されてしまう、、、
アメリカグマが人を襲っても、いいことなんて1つもないですね。
アメリカグマが人を襲う確率はとても低いのですが、人口密度が増えてしまえばそれだけ襲われてしまう可能性が増えます。
アメリカグマとグリズリーはどっちが危険?
北アメリカ大陸に生息しているもう1種類のクマ「グリズリー」は、最大で3m、体重は500㎏にもなる大型のクマです。
統計によれば、アメリカグマの生息数は60万頭、グリズリーは6万頭だと言われています。
それなのに、グリズリーの方が人間を襲っているんです。
もちろん、死亡者数も多いです。
これはグリズリーとアメリカグマの、人を襲う目的が違うからです。
アメリカグマは人間を食べるために襲います。
そのため「食べられない!危険だ!」と思えば諦めます。
一方のグリズリーは、自分や子どもの身を守るために襲い掛かってきます。
そもそもで相手を危険な対象として認識しているため、容赦しません。
殺すまで襲い掛かってきます。
野生のアメリカグマとグリズリーがケンカすることもあるようです。
この場合、体格の上回るグリズリーに軍配が上がることが多いようです。
アメリカグマはプーさんのモデル!?
実は、「くまのプーさん」のモデルはアメリカグマだったとされています。
第一次世界大戦中に、カナダに駐屯していた獣医師の兵士が、現地猟師からアメリカグマの孤児を20ドルで買い取りました。
その隊のマスコットとなったアメリカグマは「ウィニー」と名付けられ、イギリスに渡ります。
そして、隊が再び旅立つ際にロンドンの動物園に預けられました。
「クマのプーさん(英名:Winnie the pooh)」の原作者であるA・A・ミルンの息子「クリストファー・ロビン」がこの動物園を訪れた時にウィニーにふれあい、自分のテディベアを「ウィニー」と名付けます。
これが「クマのプーさん」誕生の背景なんです。
ウィニーはそれから20年ほど、ロンドン動物園で愛され続けました。
まとめ
アメリカグマはアメリカ合衆国、カナダで最もありふれているクマです。
人間と接する機会も多く、危害を加えた場合は駆除されてしまいます。
でもよく考えてみると、アメリカグマのテリトリーに侵入してきたのは人間の方ですよね。
それなのに駆除されてしまうことが多いのは、正直人間のエゴとしか思えません。
同じような事例で絶滅してしまった動物も数多くいますよね。
アメリカグマと人間が共存できるようになることが重要なポイントでしょう。
幸いにも、アメリカグマはワシントン条約に記載されているため、法的に保護されています。
このまま保護活動が続き、絶滅という最悪の結果だけは避けてほしいです。
クマのプーさんのモデルがアメリカグマだったなんて面白いですよね。
確かに太っちょなイメージはぴったりです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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