ジュゴンは、マナティーと同じカイギュウ目の哺乳類で、一説によると人魚のモデルになったとも言われています。
オーストラリアに最も多く生息しているジュゴンですが、東南アジアや、アフリカ海域、そして日本にも生息しているんです。
沖縄はジュゴンが生息している最も北の海域です。
そんな沖縄のジュゴンは現在数が激減しています。
日本でジュゴンが見れなくなってしまうかもしれないんです。
ジュゴンとはどのような動物なんでしょうか?
どのような場所で暮らしているのでしょうか?
そして、飼育している水族館はあるのでしょうか?
人魚伝説のモデル「ジュゴン」に迫ります。
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ジュゴンってどんな動物?
ジュゴンはジュゴン目(海牛目)・ジュゴン科・ジュゴン属の哺乳類です。
ジュゴンのみでジュゴン科・ジュゴン属を構成しています。
分類学的にはゾウに近く、胸ビレには骨も残っています。
現在地球上に存在しているジュゴン目のもう1つの仲間がマナティーです。
過去にはステラーカイギュウという超巨大な海牛が存在していました。
しかし残念ながらステラーカイギュウは1760年代に、人間の乱獲により絶滅してしまっています。
ジュゴンの生息地
ジュゴンはモザンビーク北部やマダガスカルから、紅海・ペルシャ湾・インド・インドシナ半島・ボルネオ島・ニューギニア島・ニューカレドニア・バヌアツ近海にかけて分布しています。
基本的に熱帯や亜熱帯の海域に幅広く生息しています。
最北端は日本の沖縄諸島で、最南端はオーストラリアです。
全世界のジュゴンの生息数は10万頭だと推測されています。
オーストラリアのシャーク湾やモートン湾は世界自然遺産にも指定されていて、ジュゴンの生息数も多く、約8万頭が生息しています。そのほかの海域に2万頭が生息しているということですね。
沖縄にもジュゴンがいるの?
ジュゴンは沖縄諸島の海域にも生息しています。ここがジュゴン最北端の生息地ですね。
沖縄本島の古宇利島周辺でも目撃例があるため、この辺りに生息していると考えられています。
また、奄美大島、八重山諸島でも目撃例があります。
ただし、沖縄のジュゴンは危機的状況にあります。
漁網に引っかかる被害により、生息数が激減してしまったんです。
また、エサのアマモが生えている場所も減っています。
一説には、沖縄のジュゴンは50頭以下、目撃例も少ないことから絶滅したとも、、、
日本の環境省が定めているレッドデータブックでは「絶滅危惧ⅠA類」に指定されています。
1972年には国の天然記念物にも指定されています。
捕獲や殺傷が禁止され、保護に力が入れらています。
ちなみに文献を確認する限りでは、過去には本州、四国、九州にも分布していたようです。
ジュゴンの特徴
ジュゴンの全長は最大で3m、体重は450㎏にもなります。
全身が灰色でお腹の辺りが少しだけ明るい色をしています。
また、あまり目立ちませんが、全身に体毛が生えています。
胸ビレは海底を這うために役立ち、先端は皮膚が固くなっています。
尾ビレはイルカのように三角形をしていて、これがマナティーとの大きな違いです。
口は顔の下の方にあり、海底に生えている海草が食べやすくなっています。
鼻の穴が顔の上部にあるため、最小限顔を上げるだけで呼吸することができます。
ジュゴンの生態
ジュゴンは基本的に単独、または母と子どもの少数で行動しています。
ただし、まれに数百頭の群れを作ることもあるようです。
昼間に活動することがほとんどですが、人間がいる海域では夜行性となることもあります。
基本的には胸ビレを使って海底を歩いています。
通常は時速3㎞ほどで泳ぎますが、逃げるときは時速20km以上にもなります。
ただし、持久力はあまりないようです。
潜水時間は6分以上、水深12mまで潜ることができます。
ジュゴンの食性
ジュゴンは草食性です。
アマモなどの海草を食べています。
ただ、ゴカイ、カニなどの小型生物を補助として食べることはあるようです。
口は海底の海草を掃除機のように吸い上げるために下向きについていて、ヒゲは海草をより分けるのに役立ちます。
下から見たジュゴンの口
1日に体重の10~16%のエサを食べる必要があり、450㎏の個体だと72㎏のエサを食べるという計算になります。
そのため、洪水や台風でアマモが消えてしまうと、他の海域に移動します。
腸がとても長く45mもあり、消化の悪い海草でも80%消化できます。
他の草食哺乳類よりも消化率が良いということになります。
食後に、あお向けになって伸びをすることがありますが、これは食べた海草を消化器官に送り込んでいるそうです。
ジュゴンの繁殖
ジュゴンの繁殖形態は胎生です。
妊娠期間は13ヶ月ほどで、1回の出産で1頭の赤ちゃんを産みます。
授乳期間は18ヶ月で、子どもはお母さんの後を泳ぎながらお乳を飲みます。
生後6~17年で性成熟します。
低緯度な海域ほど短く、高緯度な海域ほど性成熟までの期間は長いとされています。
ジュゴンの増加率は5%ほどだと言われています。
これは100頭いても5頭ずつしか増えないという計算です。
そのため、個体数を減らしてしまうと、あっという間に生息数が減ってしまいます。
研究のためと言えど、多くの数は捕獲できないということですね。
ちなみにジュゴンの寿命は最長73年です。
ジュゴンの性格
ジュゴンはとても神経質な性格です。
人間はもちろん、船のモーターの音なんかにも反応してしまいます。
マナティーが人に対しても好意的なのに対し、ジュゴンは人間を怖がることがあります。
ジュゴンとマナティーの違い
ジュゴンと同じ海牛目の動物がマナティーです。
どちらもよく似ていますが、大きな違いがあります。
それが尾ビレと口です。
ジュゴンの尾ビレがイルカのように三角形をしているのに対し、マナティーの尾ビレはうちわのように真ん丸です。
また、ジュゴンは海草を食べるために口が下向きについています。
一方のマナティーは海面の海藻や海岸に生えている陸生植物なんかも食べるため、ジュゴンほど口は下を向いていません。
とても似ている両者ですが、じっくり見れば違いも見えてきます。
基本的に尾ビレの形を見れば一目で分かりますね。
ジュゴンは人魚のモデル!?
ジュゴンが人魚のモデルになったのは結構有名な話ですが、実際のところはどうなのでしょう?
実は有力だと言われているのは「人魚伝説を後からジュゴンに結び付けた!」という説です。
ジュゴンには胸ビレの付け根に乳頭があり、これがおっぱいに見えることから「昔の人はジュゴンを見て、人魚だと思ったんじゃないの?」っていう考えが浮かんだんだと思います。
さすがにジュゴンって人魚には見えませんよね?
ロマンはありますけど。
結論は「ジュゴンは人魚のモデルではない」ということにしておきましょう。
ジュゴンと人間の関係
基本的に浅瀬で暮らしているジュゴンには天敵はいません。
しかし、人間が唯一の天敵と言えそうです。
食用、脂肪や皮目的の乱獲、漁網やサメ除けのネットに引っかかってしまう被害などで生息数は減っています。
また、開発による赤土の流出で、エサとなるアマモが育たなくなる問題もあります。
現在、世界的にも絶滅危惧種に指定され、懸命に保護されています。
オーストラリアのジュゴンも保護海域に生息していますが、この地域の先住民はジュゴンの狩りが許されています。
文化を重んじるという考えなのでしょうか?結果として毎年1000頭ものジュゴンが捕獲されています。
ジュゴンがいる水族館
神経質なジュゴンは飼育がかなり難しいとされています。
現在ジュゴンを展示している水族館は世界中を探しても4ヶ所のみです。
・鳥羽水族館(三重県鳥羽市)
・アンダーウォーターワールド(シンガポール)
・シーワールド(インドネシア)
・シドニー水族館(オーストラリア)
鳥羽水族館のジュゴン
三重県鳥羽市の鳥羽水族館では「人魚の海」というコーナーに、メスのジュゴン「セレナ」が暮らしています。
2011年にオスの「じゅんいち」が死亡してからは1頭のみで生活しています。
ちなみに鳥羽水族館ではマナティーも飼育されています。
海牛目を2種類見られるのは、日本中探しても鳥羽水族館だけです!
まとめ
・ジュゴンは熱帯や亜熱帯の海に生息している
・最南端の生息地はオーストラリア、最北端は沖縄です。
・食性は草食
・ジュゴンはとても臆病で神経質な性格
・絶滅の危機も!
ジュゴンがまだ沖縄にも生息していたら本当にうれしいですよね。
これほどレアな生き物が日本にいるのは誇りです。
絶滅の危機がありますが、何とか生き残ってほしいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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