コビトカバって知っていますか?
カバと言えば3mにもなる大型の動物ですが、コビトカバは1.5mくらいの小型のカバです。
少し前に発見されたコビトカバは、最初はカバの奇形なんて言われていたんです。
それほどあり得ない見た目だったのでしょう。
不思議な外見は「オカピ」「ジャイアントパンダ」に並んで「世界三大珍獣」に含まれるほどです。
コビトカバとはどんな生き物なんでしょうか?
どこでどんな暮らしをしているのでしょうか?
小さなカバ「コビトカバ」に迫ります。
好きなところにジャンプできます
コビトカバ
コビトカバ | |
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学名 | Choeropsis liberiensis |
英名 | Pygmy hippopotamus |
生息地 | リベリア、ギニア、コートジボワール、シエラレオネ |
体長 | 150~175㎝ |
体重 | 180~275㎏ |
コビトカバは偶蹄目・カバ科・コビトカバ属の哺乳類です。
現存するコビトカバ属はこの種類のみです。
カバの仲間ではかなり原始的な種類だと言われています。
発見されたのは1913年とかなり新しく、それまでは頭蓋骨が見つかっても「カバの奇形」として、きちんと扱われなかったそうです。
コビトカバが生息しているナイジェリアなどが内乱の続いている地域だったことも、発見が遅れた原因です。
コビトカバの生息地
リベリア、ギニア、コートジボワール、シエラレオネの森林や沼地に生息しています。
過去にはナイジェリアやマダガスカル島にも生息していましたが、絶滅したと考えられています。
夜行性で、基本的には単独で行動しますが、ペアやその子どもからなる家族で生活することもあります。
川辺で休む際は巣穴を利用することがあるようです。穴を掘るかどうかは分かっていないため、他の動物の古巣を利用している可能性もあります。
コビトカバの特徴
コビトカバは体長1.5~1.75m、体重は180~275㎏です。
これだけ見ると大きいか小さいか分かりませんよね?人間と比べると体重が重いため、大きいと感じてしまうかもしれません。
ではカバと比べてみましょう。
カバの体長は3.5~4m、体重は最大で3000㎏です。3トンです。
つまり、カバの大きさをコビトカバと比べると、体長は2倍以上、体重にいたっては10倍以上違うということです。
どうですか?コビトカバがいかに小さいか分かったでしょう。
コビトカバとカバの体色に違いはほとんどありませんが、コビトカバの方が暗い色をしているようです。
他に2種類はオカピとジャイアントパンダだ!
カバとコビトカバの顔の違い
カバとコビトカバは体の大きさ以外に違うところがあるのでしょうか?
顔の違いを比べてみましょう。
ぱっと見、大きな違いはありませんが、よーく見ると違うところが分かってきませんか?
まずは鼻の位置です。
カバの鼻の穴が上を向いているのに対し、コビトカバの鼻は前を向いているように見えますね。
また、目の形も違います。
カバは目のある位置が膨らんで、目が立体的に浮き出ています。一方のコビトカバの目の位置は膨らんでいません。
最後に耳の形です。
カバの耳が大きく上に生えているのに対し、コビトカバの耳は小さく横を向いています。
トータルで見て、カバの鼻、目、耳は顔の上部に一直線になるように並んでいます。
一方のコビトカバは上部ではなく、側面よりですね。
これはカバの進化をよく表しています。
カバは水の中で暮らすことに適応するため、顔のパーツが上の方に並んぶように進化したんです。
このおかげで、水の中に入っていながら、鼻を出して呼吸をすることも、目や耳で周囲の状況を確認することもできます。
コビトカバも基本的には水中生活を中心としていますが、カバほどではありません。
陸上でも多くの時間を過ごしています。
そのため、カバのように水中生活に特化したような顔の配置じゃないんです。
呼吸をするためには顔を大きく水面から出さなくてはいけません。
コビトカバは水の中に頻繁に入るようになり、カバのような顔の配置に変化していったと考えられています。
原始的なカバだと言われている理由が分かりますよね。
ただし、カバと同じように、コビトカバにも水かきがあるため、水の中でも上手に活動できるみたいです。
また、耳や鼻の穴を筋肉によって閉じることもできます。これもカバと同じ特徴です
潜水時間も6分と、とても長いです。
あくまで「カバほど水中生活を中心にしていない」といったところですね。
コビトカバは血の汗をかく
コビトカバは皮膚が乾燥に弱いため、水分が足りないとひび割れてしまいます。
カバは水に入りますが、コビトカバは頻繁に水浴びをするわけではありません。
コビトカバの生息している地域は、湿度が比較的高めです。そのため、皮膚の潤いが保てているようです。
また、皮膚の汗腺がないため、皮脂による皮膚の保護ができません。
その代わり血のように赤い分泌液を流しだすことができます。
保湿の効果が抜群なうえ、赤は紫外線を通さないため、日焼け止めの効果もあります。
さらに雑菌の繁殖を防いで、感染症も予防します。
皮膚の健康維持に欠かせない、万能液なんですね。
このピンク色の血の汗はカバも分泌することができます。
コビトカバの食べもの
コビトカバは草食性です。
草、木の根、木の葉や落ち葉、果実などを食べています。
カバのように平地の草を食べることはほとんどありません。
夜行性で、昼間は川の中で休み、夕方になると森の中を歩きだします。
だいたい6時間ほどは食べることに費やすみたいです。
コビトカバの性格
カバといえば、動物界屈指の凶暴性を持っている動物として有名ですよね。
その破壊力は、地上最強とも言われるほどです。
しかし、コビトカバは体型に似合ったおとなしい性格をしています。
カバのように、縄張りに入ってきた動物を手当たり次第に威嚇していくのではありません。
同じコビトカバが入ってきてもお互いに無視するほど温和な性格なんです。
コビトカバの繁殖・子育て
コビトカバは胎生です。
繁殖期間は35日に1回、1~2日間です。
交尾は水中や陸上で行われ、繁殖期間中は同じ相手とのみ過ごします。
妊娠期間は200日前後で、1回の出産で1頭の赤ちゃんを産みます。
子どもは生まれてすぐに泳ぐことができます。
子どもは、水中では母親と一緒に行動しますが、母親がエサを食べに行くと水中に留まります。
陸の方が危険だということを知っているんですね。
母親はエサを食べると水辺に戻り鳴き声で子どもを呼びます。
そして横たわって母乳を与えるんです。
子どもは6~8ヶ月間母親と一緒に過ごし、4~5年で性成熟します。
コビトカバの寿命
コビトカバは飼育下では30~55年生きると言われています。
野生下での寿命は15~20年と言われていますが、詳しくはまだ分かっていません。
コビトカバの天敵
コビトカバはカバと違って大きな体を持っていないため、捕食されることがあります。
カバはその圧倒的な大きさで天敵を寄せ付けないため、群れで行動して外敵に見つかりやすくても関係ありません。
ただし、コビトカバの場合は群れで行動してしまうと天敵に見つかりやすくなってしまうため単独で行動しています。
天敵はヒョウ、ワニ、ニシキヘビなどですが、詳しい外敵は判明していません。
コビトカバは絶滅危惧種
コビトカバは現在、絶滅危惧種に指定されています。
理由は、
・生息地の開発
・水質汚染
・食料としての捕獲
・牙目的の密猟
などです。
1993年に行われた生息数の調査ではわずか200~300頭のコビトカバしか発見されませんでした。
現在は保護下にありますが、コビトカバの生息地は内乱が多く、正確な生息数の調査は難しいとされています。
基本的には牙がカバほど立派ではないため、牙目的での密猟は少ないようです。
しかし、肉がとてもおいしいと言われていて、食料としての狩猟は頻繁に行われています。
さらに、コビトカバが生きていくためには森林やきれいな水辺が必要です。
開発によってこのような場所が減ってしまっているため、コビトカバの数も激減しています。
ナイジェリアやマダガスカル島ではすでに絶滅したとされています。
また、森林伐採が進んでしまうと、群れが孤立してしまいます。
他の地域に移動することができなくなり、遺伝子的に近いコビトカバどうしでの近親交配が起こってしまいます。
そうなると遺伝子がどんどん弱くなってしまい、伝染病がはやってしまうと一気に滅んでしまう可能性もあります。
森林伐採が、コビトカバにとって1番の脅威となっているんですね。
コビトカバはペットにできる?
コビトカバはおとなしいため、ペットにしたいと思う人がいるかもしれません。
しかし、コビトカバを飼育することはできません。
コビトカバはワシントン条約に記載されているため、国際的な取引には国同士の許可が必要です。
絶滅の心配もあるため、厳格に保護されています。
密猟や違法な取引には厳罰がくだされるため、個人的にペットにすることは不可能でしょう。
コビトカバを飼育している動物園
現在日本でコビトカバを飼育している動物園は4ヶ所あります。
・上野動物園(東京都上野)
・東山動物園(愛知県名古屋市)
・いしかわ動物園(石川県能美市)
・アドベンチャーワールド(和歌山県西牟婁郡)
上野動物園のコビトカバ
上野動物園では現在4頭のコビトカバが飼育されています。
しかも4頭は家族です。
お父さんがショウヘイ、お母さんがエボニー、お姉ちゃんのモミジと妹のナツメです。
基本的に、1頭ずつが代わるがわる展示されているようです。
・ショウヘイ(♂)
1990年11月19日生まれ
1991年12月2日愛知県の東山動物園より来園
・エボニー(♀)
1989年12月1日生まれ
1993年3月8日アメリカのセントルイス動物園より来園
・モミジ(♀)
2003年11月20日生まれ
・ナツメ(♀)
2011年6月22日生まれ
また、上野動物園ではコビトカバの他に「ジャイアントパンダ」「オカピ」という他の三大珍獣も展示されています。
珍獣好きにはたまりませんね。
東山動物園のコビトカバ
名古屋の東山動物園にはコウメとコユリという2頭のコビトカバが飼育されています。
このうちコユリは上野動物園で産まれた子です。
東山動物園ではコビトカバが結構近くまで来てくれるみたいで、シャッターチャンスが訪れるかもしれません。
いしかわ動物園のコビトカバ
石川県のいしかわ動物園では、現在3頭のコビトカバが飼育されています。
オランダのオーフェルローン動物園からやってきたメスの「ノゾミ」と、シンガポール動物園からやってきたオスの「ヒカル」 、そして2016年末に2頭の間に誕生した子ども、オスの「ミライ」の3頭です。
まだミライが幼いため、母親と一緒に過ごしているところを見ることができます。
アドベンチャーワールドのコビトカバ
和歌山県のアドベンチャーワールドでは「ミニカバ」として、コビトカバが展示されています。
「サクラ」という1頭が飼育されています。
このサクラは上野動物園で2001年にショウヘイとエボニーの間に生まれた子供です。
ショウヘイとエボニーは日本中の動物園にコビトカバを増やしてくれそうですね。
※コビトカバは寒さに弱いため、冬場は部屋の中から出てこないことがあります。
また、縄張りの主張のため、糞をまき散らす習性があります。おしりを向けてきたら要注意です。
まとめ
・コビトカバはアフリカの限られた森林や沼地に生息
・カバの半分の大きさ、重さは10分の1以下
・原始的なカバなため、世界三大珍獣に含まれている
・開発や乱獲で数を減らしている
・日本でも複数の動物園で飼育されている
コビトカバはカバなのに小さいという、反則なかわいさを持っていますね。
絶滅が心配されています。
日本の動物園で繁殖が成功しているのは、種の保存に役立っていますね。
これからも日本でコビトカバが見続けられるように祈っています。
もちろん、野生のコビトカバが減らないことが大前提ですけどね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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