スズメバチと言えば、人間が刺される被害も多い、世界最大級のハチですよね。
一度でもターゲットにされれば集団で襲い掛かってくる恐ろしい危険生物です。
毎年多くの人がスズメバチの被害に合い、中には命を落としてしまう人もいます。
そんなスズメバチを全く恐れずに、攻略してしまう鳥がいることを知っていましたか?
それが『ハチクマ』です。
いかつい名前のこの鳥は、タカなどの猛禽類の仲間です。
ハチクマはスズメバチを襲っても平気なんでしょうか?
危険生物をものともしない頑丈な鳥、ハチクマに迫ります。
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ハチクマってどんな鳥?
ハチクマはタカ目・タカ科・ハチクマ属の鳥で、現在はハチクマ、ヨーロッパハチクマ、ヨコジマハチクマが確認されています。
全長50~60㎝。体色は黒から茶色がかった暗い色をしていますが、羽の色は個体差が大きく、真っ黒な個体もいれば全体が茶色な個体もいます。
一般的にオスよりメスの方が大きくなります。
名前の由来はハチを食べることと、見た目がクマタカに似ていることだそうです。
同じようにハチの巣を襲うことがあるクマにもかかっていて、ぴったりのネーミングですね。
ハチクマは渡り鳥
ハチクマは季節によって住む拠点を変える渡り鳥です。
日本で繁殖する個体は、日本と東南アジアを行き来しています。
日本には初夏に渡ってきて九州、本州、四国などで繁殖します。
冬になると九州、朝鮮半島を経由して中国大陸に渡り、東南アジアを目指します。
東南アジアで冬を越えた後、再び夏に日本で繁殖します。この際、来たルートとは別のルートで日本を目指すことが衛星による追跡で分かっています。
ちなみに世界一長い距離を移動する渡り鳥が「キョクアジサシ」です。
なんと北極と南極を渡っちゃいます。
ハチクマの子育て
ハチクマは山岳地帯や森林に、単独もしくはパートナーとペアで生活します。
日本には6月に渡ってきて、木の枝や木の葉で作ったお椀状の巣に、通常は2個の卵を産みます。
卵を温めるのは主にメスで、オスはせっせとエサを集めます。
だいたい28~35日で卵は孵ります。
ヒナが巣立つまでは35~45日間で、それまでは両親がエサを運びます。
ヒナは巣立ちから30日~60日で親から独立します。
そして冬になると東南アジアを目指して渡っていきます。
ちなみにこの年生まれた若いハチクマが、通常とは違う、鹿児島を通ることがあるそうです。
ただ、ルートを間違っているかどうかは分かっていません。
ハチクマの食べ物はスズメバチ!?
名前の由来にもなっていますが、ハチクマの主食はハチです。
しかも獰猛なスズメバチがターゲット。
ただし成虫を食べるのではなく、幼虫やさなぎを食べ、ヒナには壊したハチの巣のかけらを与えます。
ハチの幼虫やさなぎを食べるにはハチの巣ごと破壊しなくてはいけませんよね。
しかもハチクマは樹上の巣だけでなく、クロスズメバチやオオスズメバチと言った、地面の中に巣を作る種類のハチも狙います。
猛禽類は足が太く頑丈ですが、ハチクマの足は他の猛禽類と比べてもかなり大きいため、地面の中にあるハチの巣でも掘り返すことができるんです。
どこにハチの巣があろうとターゲットにしちゃいます。
もはやどっちが獰猛か分かりませんね、、、
ハチクマはスズメバチに刺されないの?
ハチクマがスズメバチの巣をターゲットにすることは分かりました。
ハチの幼虫やさなぎに栄養がたくさん詰まっていることも分かります。
でも疑問がうまれますよね。
刺されないための対策はばっちりなんだよ!
秘密はハチクマの羽にあります。
彼らの羽はとても太く頑丈で、ウロコのように密集しています。
この羽の鎧のおかげで、スズメバチの毒針がハチクマの体まで届かないんです。
でもちょっと待った!!
ハチの巣を狙う動物にクマがいますが、クマはスズメバチに襲われるとほとんど退散してしまいます。
クマのように体毛が密集している動物でも、スズメバチに襲われてしまえばひとたまりもありません。
それほど、スズメバチの毒針は強力なんです。
ハチクマはそんな強力な毒針を持つスズメバチに襲われてもびくともしません。
いかにハチクマの羽が頑丈かが分かりますよね。
さらに、ハチクマがスズメバチの巣を襲ってしばらくすると、ハチたちが攻撃するのをやめてしまうことも分かっています。
これについて、正しい説はまだ立証されていません。
一説によると、ハチクマが出すフェロモンや臭いによってスズメバチの攻撃性が奪われている、もしくは何度も何度も長期にわたってハチクマが攻撃するため、ハチたちが別の場所に移る考えにシフトチェンジしているからだと言われています。
ハチクマは東南アジアでも戦っている!?
ハチクマは冬になると日本を出ていきます。
そして温暖な東南アジアで冬を越すんです。
ハチクマの人生はハチとの戦いの日々なんだよ、、、
日本でハチを襲っていたハチクマなんですが、なんと台湾やタイでも同じような戦いを繰り広げていることが分かっています。
しかも、日本のハチよりも凶暴なハチを相手にすることもあるとか!
全く命知らずですね。そこが好きなんですけど。
台湾の怪物「ツマアカスズメバチ」
台湾に生息しているツマアカスズメバチは日本のクロスズメバチの2倍大きいスズメバチです。
非常に凶暴なスズメバチで、現地でも恐れられています。
ツマアカスズメバチの巣は樹上に作られます。
中には1メートルを超す大きさの巣もあり、まさに要塞と化しています。
ハチクマは集団でこのツマアカスズメバチの巣を襲います。
日本の時とは違い、仲間と連携して攻略するんです。
ツマアカスズメバチは単独で攻略するのは無理なほど凶暴なのでしょう。
襲うときは1羽がハチを引きつけて、他のハチクマが巣を攻撃します。
いかに鎧のような羽を持っているハチクマでも、大量のスズメバチに襲われればダメージを負うことがあるそうです。
針が羽の隙間をすり抜けてしまうと命の危険すらあります。
見事な連携によりツマアカスズメバチの巣を攻略しているんですね。
ちなみにハチクマは1つの巣を攻撃するまでに、何日も前から下見をするそうです。
それほどまでの強敵だということでしょう。
タイの殺人バチ「オオミツバチ」
ハチクマはタイでもハチと格闘しています。
タイには殺人ミツバチと呼ばれるハチがいます。その名もオオミツバチ!
ミツバチと言えば小さくてかわいらしい姿をイメージするかと思いますが、オオミツバチは日本のミツバチの3倍にもなる大型種です。
しかもスズメバチ並みの攻撃性を持っているとか、、、
一度ターゲットにされると大量のオオミツバチが2㎞以上も追跡してくるそうです。
まさに死の恐怖ですね。
オオミツバチは、1畳ほどの巣に5万匹以上が生活しています。
ハチクマが攻撃を仕掛けると一斉に襲い掛かります。
しかも普通のミツバチと違って、何度も針を刺すことができるんだとか、、、
ハチクマは最強の鎧でこのオオミツバチを攻略します。
日本の時と同じように、しばらく攻撃を続けるとオオミツバチはハチクマへの反撃をやめてしまいます。
まさに防御を極めた鳥ですね。
まとめ
・ハチクマは日本と東南アジアを行き来する渡り鳥
・ハチクマの主食はハチの幼虫やさなぎ
・ハチクマは頑丈な羽でハチの攻撃を防ぐことができる
・強力な足で地面のハチに巣を掘り返すことができる
・台湾では凶暴なツマアカスズメバチを集団のハチクマで襲う
・タイでは凶暴で大量のオオミツバチすらも襲ってしまう
ハチクマは猛禽類の中でも特に珍しい、ハチの巣を襲う鳥です。
分厚い羽による最強の防御力は、クマですら手出しすることができないスズメバチの巣を難なく襲ってしまいます。
逆を言えば、危険をおかしてまでヒナのエサを手に入れなければいけないんです。
スズメバチもハチクマも必死に生きているということですね。
生き物の世界はまさにドラマの連続です。
またね~!
とても勉強になりました。
僕はスズメバチの天敵は何なのかについて調べていたところこちらのサイトにたどり着きました。
ハチクマというのはあまり聞いたことがなかったのですが、実に興味深い内容でした。
特に蜂の針を通さないほどの羽については度のほどの硬さなのかまた調べてみたいと思います。
わかりやすく教えていただきありがとうございました。
タカさん
コメントありがとうございます。
ハチクマって本当にすごいですよね!わたしも最初にハチクマを知った時は衝撃的でした。
あの恐ろしいスズメバチをまったく気にしていない様子は、今でも鮮明に覚えています。
世の中には信じられないような生態を持っている動物がまだまだたくさんいますね!
これからもおもしろい動物をじゃんじゃん紹介していきますので、また遊びに来てください!
コメントもお待ちしてますね。ありがとうございました!
見た目は立派な猛禽類のくせして、なぜかハチばっかり食べているって面白いですね。
人間から見たら面白い子なんですけど、ハチからしたらたまったもんじゃないですよね。刺しても効かないし、集団で襲ってきて巣を破壊し、端からムシャムシャ捕食されちゃう。まるで巨人に襲われた壁内人類みたいです。
ハチがハチクマに襲われたら、攻撃の意欲を喪失してしまうのもわかるような気がします。恐怖と諦めの感情で手が出なくなるってところでしょうか。
さちさん
コメントありがとうございます。
確かにハチからしたらハチクマの存在はたまったものじゃないですね。絶対的な攻撃力を最大の防御としていても、それを上回る防御力を持つハチクマには敵わない、、、諦めるしかありませんね。
自然の厳しさと美しさを合わせ持つハチクマに、今後も注目していきたいと思います。